山岳ライターの小林千穂が富士山を旅する。富士山は10万年前に活動を始め噴火を繰り返してきた活火山。流れ出た溶岩や火山灰が幾重にも積み重なり現在の端正な姿を作り出した。山岳ガイド・上野真一郎とともに青木ヶ原樹海へ。平安時代初期の貞観大噴火で山の裾野を溶岩が焼き尽くした際、一つの湖が5つに分かれ現在の富士五湖ができた。焼き尽くされた湖周辺の森が何百年もかけて再生したのが現在の青木ヶ原樹海。山の二合目付近で起こった溶岩の噴出は二年にわたって続いたが、ところどころに続く小高い部分が溶岩を免れ、そこには薄暗い溶岩の森とは対照的な豊かな自然が残された。森の中には溶岩洞窟「富士風穴」があり、溶岩が作った天然のトンネルになっている。噴火で流れた溶岩はまず外側が冷えて固まる。その内側では大量の熱い溶岩がトンネルを流れ続ける。噴火が収束すると外側だけが残り、溶岩洞窟となる。かつて富士風穴は蚕の卵を保管する貯蔵庫として使われていた。3つ設けられた貯蔵小屋では寒さを利用して卵が孵化しないように保管され、各地の養蚕農家出荷されていたという。