福岡は行方捜しと並行して岡本太郎の足跡を辿った。岡本太郎は当時縄文時代に関心を寄せ、現代人が失った生命のほとばしりを見出していた。太陽の塔には万博に対するアンチテーゼが埋め込まれていた。大阪万博が掲げたテーマは「人類の進歩と調和」。丹下健三が設計した大屋根は、万博を象徴する展示とされた。丹下は地上30メートルの高さに空中未来都市を作ろうとしていたが、岡本は設計案を見て闘争心が掻き立てられた。太陽の塔は大屋根を突き破って屹立していた。塔の地下には、世界各地の神の像や仮面が飾られた中心に地底の太陽が鎮座していた。岡本太郎の研究者は、地底の太陽にこそ太陽の塔の最も重要なメッセージが込められているとした。万博では、地底の太陽に触発されたかのような事件が起きた。太陽の塔の目玉に20代の男が立てこもり、万博中止を叫んだ。当時は万博反対を訴える抗議行動が各地で行われており、反博という言葉も流行していた。岡本は、一番の反博は太陽の塔だと話している。