税金や社会保険料の「壁」の問題について。103万円、106万円、130万円の「壁」を越えることで税や社会保険料の負担が増えないよう、働く時間を制限している人がいる。総務省によると、推計で445万人が、そうした配慮を行っているとみられている。総務省は5年に1度の就業構造基本調査で、年収を抑えるために働く時間や日数を調整する就業調整の状況を調べている。2022年の調査結果では、パートやアルバイトなど非正規として働く人で就業調整を行っているのは、いずれも推計で年収50万円以上・99万円以下の人が259万人、年収100万円以上・149万円以下の人が186万人で、合わせて445万人となっている。野村総合研究所・木内登英エグゼクティブエコノミストは、年収103万円の壁の見直しの意義について、「労働時間を調整しなくてはいけないというのは壁なので、そこを解決することで労働時間が増えて人手不足を緩和する。これはひとつの意義。労働時間を減らさなくてはいけないとなると年収が増えないので、低所得の人の生活を支えるためにも年収の壁を壊す必要がある。この2つが大きな意義じゃないかなと思う」とコメント。一方で木内氏は、103万円のうちの基礎控除などを一律に引き上げると、税率が高い高所得者に減税の恩恵がより及ぶことになり、むしろ所得の格差を拡大させてしまうとも指摘。様々な角度からの検討が求められている。