熊本県のポツンと一軒家を再訪し、主の美伸さんと95歳の母・シズ子さんに話を聞いた。90歳までポツンと一軒家で3年間1人で暮らしをしていたが、5年前に山を下りて美伸さんと同居している。定期的に帰宅し夫・正徳と長女の仏壇にお参りしている。シズ子さんは24歳の時にお見合いで1つ年下の正徳さんと結婚した。戦後の食糧難対策として国の政策で次男・三男の家族に未開地を提供し戦後開拓が行われた。次男だった正徳さんもその対象となり、結婚10年後に娘3人を連れて実家を離れ面識のない他の家族と一緒に山を開拓した。全世帯共同でみかんを栽培し、収穫できるまで正徳さんは出稼ぎ、シズ子さんは山仕事と子育てに追われた。20年後にみかんの価格が暴落し廃業すると、集落の大半の家が山を下りた。シズ子さん一家は山に残り、原木椎茸の栽培を始めた。70歳で椎茸農家を廃業し、4人の娘が家を出たあともポツンと一軒家で夫婦で老後を過ごしていた。8年前、夫は86歳で亡くなった。シズ子さんは折り紙を折っており、長生きの秘訣だという。県内に住む次女の智ヵ子さんがやってきた。智ヵ子さんは中学卒業までこの家で暮らし、集団就職で山口県に行った。学校までは徒歩通学で1時間以上かかっていたという。長女の明美さんは5年前に亡くなったが、三女の悦子さんも頻繁に里帰りしている。