警察庁によると、全国の横断歩道はことし3月末時点で約116万本あり、交通量が多い場所では、2年から3年おきに白線の塗り直しが必要だという。今年度は白線の塗り直しなどの予算として、国と地方合わせて82億円余りが計上されている。白線のすり減り具合をもとに、優先順位をつけながら塗り直しを進めているが、費用面などですべてに対応できていないのが現状である。白線が塗り直されなかった現場で事故も起きている。2018年10月、川崎市川崎区の横断歩道を横断していた男性が、タンクローリーにひかれる事故があり、運転手が横断歩道と認識できなかったことが事故の要因の1つとされた。警察庁は白線の間隔を現在の約45センチから90センチまで広げることにした。塗り直す部分が減ることで、標準的な幅7メートルの道路の場合1回あたり2万円近く削減できるとしている。さらにタイヤとの接触を減らすことで、塗り直しの頻度も減らせるため、今年7月からすべての横断歩道で運用を始めようとしていた。しかし、目の不自由な人たちから戸惑いや不安の声が多く上がった。今回の制度改正にあたって警察庁などは、ドライバーや歩行者からの横断歩道の見え方などを検証していたが、その際目の不自由な人たちの意見や視点は確認していなかった。警察庁は目の不自由な人たちの声を受けて、当初の方針を変更し、信号が変わったことを音で知らせる装置と、エスコートゾーンと呼ばれる、誘導ブロックが設置されている一部の横断歩道に対象を絞り、7月26日から制度を開始した。埼玉大学・久保田尚名誉教授は「横断歩道の合理化を進めていくのにあたって、警察は利用者の不安を解消する努力が一層必要だ」と指摘している。