熊本市内に建つ築50年以上で48戸からなる分譲マンションで管理組合の理事長は今後の地震に備え、建物を補強する耐震化を進めたいと考えていた。しかしそこには高いハードルがあり、それは資金面となっていた。耐震工事に必要な費用は5,000万円以上となり、工面する見込みが立っていなかった。このマンションは熊本地震で被災し、その復旧工事で資金を使い果たしていた。現在、住民からは管理費などで月に13,000円を集めている。ただ老朽設備の補修などに使わざるを得ず、耐震化という将来の備えにまでは対応できないという。耐震化には大きく3つのステップがあり、「診断」「設計」「工事」となっている。課題は最初の「診断」にあり、診断の結果が悪ければマンションの価値が下がりかねないと耐震診断に反対する住民がいるという。一方、同じ課題を抱えながらも住民たちの合意のもと耐震工事を予定するマンションがあった。近年普及し始めている「耐震スリット工法」で工事は壁と柱を切り離して隙間を作るという。通常、横揺れの力受けると柱に大きな負担がかかるが隙間を作ることで柱に力が伝わりにくくなり柱の崩壊を防ぐ。これまで主流だった「鉄骨ブレース工法」に比べコストも大幅に抑えられるという。このマンションでは当初1億円以上かかるとされた耐震工事を、この工法で1,280万円にまで抑えることができた。