- 出演者
- 寺門亜衣子
2016年4月14日、最大震度7の地震が2度に渡って熊本県を襲った。犠牲者は災害関連死を含めて200人以上、住宅被害は20万棟以上にのぼった。分譲マンションが集中する熊本市内では、7割以上が被害を受けた。そして発災直後に的殺な対応ができず、様々な課題が浮き彫りになった。
今回のテーマは「熊本地震 9年 マンションの防災対策は」について。熊本地震が発生したのは2016年で最初の震度7があったのが4月14日で、2日後の4月16日に2度目の震度7という大きな揺れが襲った。住宅被害が20万棟以上となったがその中でもマンションの被災状況を見ていくと、倒壊や建て替えが必要な大破からタイルの剥離やひび割れなどの補修が必要な小破まで含めると7割の分譲マンションに被害があった。きょうはマンションなどの集合住宅の防災について「発災直後の対応」「高齢者支援」「耐震化」の3つのキーワードについて考えていく。
9年前、震度7の揺れを2回観測した熊本地震。熊本市では7割以上の分譲マンションが被害を受け、住民たちは安全の確保そして復旧に向けた様々な対応に追われた。マンションで課題となったのが安否確認となっていた。このときの教訓を活かそうと県内のマンション管理組合の団体が作ったのが「マンション地震対応箱」である。箱の中には地震が起きたとこに何をすればいいのか書かれたカードが入っていた。地震直後に行うことは6つで、まず「役割を決める」「防災グッズを取り出す」でその後は「住民の救助と安否確認」「2次被害防止」「携帯トイレ・飲水の確保」となり「住民に周知」することも大切である。「マンション地震対応箱」は普段は玄関などに置き、管理組合の役員だけではなく誰でも使えるようにしている。全国に活用を呼びかけたところ、現在は700棟以上のマンションで導入されているという。
復旧作業でも困ったことがあり、被害状況の確認に住民の立ち会いが必要となるが住民がバラバラに行動してどこにいるのかわからなかったという。そのため連絡リストを作ってメールアドレス・携帯電話を聞いておくことも大事である。そして国崎さんが考案した地震対応マニュアルを紹介。スタジオで中のものを見ていくと、初めて災害対応する人でも迷わずカードでやるべきことが書かれていた。
横浜市にある大規模マンションでは2022年から初動対応マニュアルを導入した。大規模マンションならではの工夫をマニュアルに取り入れているという。災害発生後3つの班を編成し、安否確認班は30分ごとに本部へ報告する。また建物確認班はマンション全体の被害状況を確認。防災力向上への取り組みが認められ、横浜市からは「よこはま防災力向上マンション」に認定されている。
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- 横浜市(神奈川)
初動対応マニュアルは賃貸マンションでも導入している事例があり、賃貸マンションは居住者の出入りが多いため賃貸マンションにとても向いているシステムではないかという。また導入したい管理組合や賃貸マンションに対してアドバイザーの派遣制度があるとのこと。続いては「高齢者支援」について。
東京・調布市にある築50年以上のマンションでは800人を超える入居者は4人に1人が75歳以上となっているため、大規模災害時に”どう支え合うか”が長年の課題だった。いざという時支援が必要な高齢者に住民で対応するため、マニュアルを3年前に作成。これには確実に支援を届ける工夫がある。マニュアル作成の中心となった久保田潤一郎さんがまず取り組んだのは徹底した”現状把握”だった。災害時に支援が必要な名簿を初めて作った結果、支援を希望する人は”60人”にのぼることがわかった。どこの世帯にいるのかも一目でわかるよう、早見表も作っていた。マニュアルではボランティアが住民の安否確認や必要に応じて水や食料の支給などを行うことになっている。こうした支援を速やかに届けるため、住民には「安否確認マグネット」と事前に配布しているシートに具体的に書き込んでドアの外側に貼り付けてもらうことにしている。さらにマニュアルでは家具の転倒を防ぐ工夫や、初期消火に使う消化器の点検などを呼びかけいざという時に備えている。
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- 調布市(東京)
昭和59年以前に建てられた分譲マンションでは住民の55.9%が70歳以上だという。避難所では地域ボランティアや学生が運営の手伝いをしていたため、マンションでもボランティア・学生・NPOと連携してマンションの災害対応も考えても良いかもしれないとのこと。マンション内の対応として集合住宅のメリットをいかすというのがあり、要支援者の名簿作りと同時に同じマンションに住む専門家を登録すると良いことについてと話した。
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- 国土交通省
災害時に家にあったおむつは使い切り、近くの店でも品切れ状態。そんな時役に立つのが、タオルとレジ袋になる。まず袋の持ち手・両脇を切って開き、袋にタオルなどの清潔な布を敷き持ち手をおなかの上で結んで袋の下側を上の結び目の下に通して固定し出来上がり。袋の大きさを変えれば大人用も作ることができる。
最後のキーワードは「耐震化」となる。マンションの耐震基準は1981年以前の基準である旧耐震基準とそれ以降の新耐震基準がある。旧耐震基準で建てられた建物は震度5程度を想定されており、熊本地震では旧耐震基準のマンションのうちおよそ44%が半壊以上の罹災証明を受けていた。新耐震基準のマンションでも被害があり半壊以上でも27%以上となっていた。全国のマンションの7戸に1戸の103万戸が旧耐震基準で建てられたマンションだとされており、その中にはまだ耐震化されていないマンションもあるという。
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- 平成28年熊本地震
熊本市内に建つ築50年以上で48戸からなる分譲マンションで管理組合の理事長は今後の地震に備え、建物を補強する耐震化を進めたいと考えていた。しかしそこには高いハードルがあり、それは資金面となっていた。耐震工事に必要な費用は5,000万円以上となり、工面する見込みが立っていなかった。このマンションは熊本地震で被災し、その復旧工事で資金を使い果たしていた。現在、住民からは管理費などで月に13,000円を集めている。ただ老朽設備の補修などに使わざるを得ず、耐震化という将来の備えにまでは対応できないという。耐震化には大きく3つのステップがあり、「診断」「設計」「工事」となっている。課題は最初の「診断」にあり、診断の結果が悪ければマンションの価値が下がりかねないと耐震診断に反対する住民がいるという。一方、同じ課題を抱えながらも住民たちの合意のもと耐震工事を予定するマンションがあった。近年普及し始めている「耐震スリット工法」で工事は壁と柱を切り離して隙間を作るという。通常、横揺れの力受けると柱に大きな負担がかかるが隙間を作ることで柱に力が伝わりにくくなり柱の崩壊を防ぐ。これまで主流だった「鉄骨ブレース工法」に比べコストも大幅に抑えられるという。このマンションでは当初1億円以上かかるとされた耐震工事を、この工法で1,280万円にまで抑えることができた。
耐震化を拒む壁は色々とあり、「資産価値の低下懸念」でまずは耐震の診断を受ける必要があるがここで悪い結果が出ると自分のマンションの価値が低下してしまうのではないかと心配して反対する方がいらっしゃるとのこと。また共用部分の変更を伴う工事には3/4の合意が必要となってくる。工事をする際に参考になるのが「東京都マンションポータルサイト」となっており、「耐震化」の改修事例などが企業や工事内容などとともに詳しく公表されている。また耐震化を後押しする制度や耐震化後のメリットについても紹介していった。
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- 東京都マンションポータルサイト