ノーベル平和賞受賞で日本原水爆被害者団体協議会に改めて注目が集められているが、これまで活動をリードしていた被爆者の多くは亡くなった。広島市原爆死没者名簿に記された犠牲者の数は34万4306人あるが、23年前から記帳を続けている中本信子はこれまでに5万人を超える名前を記してきた。中本が被爆の実相と向き合うきっかけになったのは40歳から始めた絵画だった。毎年平和を題材にした展覧会があり、原爆で犠牲となった教師と子供に碑を、特に思いを込めて描いた。被爆者としての役割を意識するようになり、広島市から2001年記帳の依頼を受けたという。今年8月、記帳を始めたときから共に筆をとってきた女性が病気で亡くなり、女性の思いをつないで中本は被爆80年となる来年も原爆死没者名簿と向き合う。