原子爆弾の投下から4日後に広島の広島赤十字病院で撮影された写真。広島の街を壊滅させた原子爆弾は医療体制をも一瞬で破壊した。爆心地から2kmの中で建物が残った病院は僅か2つ。荒野となった街でひん死の重傷を負った人々が広島赤十字病院に押し寄せた。その数は1万人に上ったともいわれる。人類史上初めての惨禍。医療従事者たちは誰も経験したことのない事態に対峙することになった。被爆80年を前にした今年、広島赤十字病院に関する新たな資料が次々と見つかった。現場を指揮した病院長が日々記していた手帳。病院で治療を受けた601人の病床日誌も見つかった。そこから見えてきたのは次々と被爆者を襲った未知の症状。被爆直後から医療の最前線となった広島赤十字病院。人々はそこをいのちの塔と呼んだ。