広島市で77人が犠牲になった土砂災害からきょうで10年。被災地では砂防ダムなどの整備が進んだ一方、土砂災害のリスクのある地域に新たに移り住む住民も多く命を守るための取り組みを着実に進められるかが課題となっている。2014年8月20日の未明から明け方にかけて集中的な豪雨によって広島市内の166か所で土石流や崖崩れが発生。災害関連死を含めて77人が亡くなった。この10年、被災地では山の斜面に土砂を受け止める砂防ダムが計画された30か所すべてに設置されたほか、地下には2万2000立方メートルの水をためられる設備が整備された。一方、土砂災害警戒区域に新たに建設された住宅が多くあり、砂防ダムがあれば大丈夫と考えて移り住んできた人も少なくない。これについて専門家は「砂防ダムの機能を上回る災害が発生する可能性も十分ありうる」として大雨の際は避難するよう呼びかけている。また広島県内では特にリスクが高い土砂災害特別警戒区域が全国で最も多い4万5000か所余りあり、区域内に暮らす人は12万人に上ると推計されている。このため県は特別警戒区域での開発を抑制することを目指す取り組みを段階的に始めていて、50年後にはこうした地域に住む人がほぼいない状態を目指すとしている。各地で大雨による災害が相次ぐ中、10年前の教訓を忘れず、命を守るための取り組みを着実に進められるかが課題となっている。