NHKの経済コラムから。日銀が7月に決めた利上げについて。このタイミングでの利上げは、日銀ウォッチャーと呼ばれるエコノミストにも衝撃をもって受け止められた。利上げはまだ先だろうと多くの人が考えており、その根拠の一つが個人消費の弱さだった。楽天証券経済研究所・愛宕伸康チーフエコノミスト(日銀出身)は当時を振り返り「GDPも実質賃金もまだマイナスで、家計調査の内容も弱かった。『日銀の見通しどおりだ』とは言いづらいと判断していたので、利上げはサプライズだった」とコメント。日銀が利上げに踏み切った理由について。第一生命経済研究所・熊野英生首席エコノミスト(日銀出身)は、主な要因は政治だという。「植田総裁は5月7日の岸田総理大臣との会談で十中八九、円安対応をお願いされたのではないか。会談後にトーンが変わり、利上げをする用意があると言うようになった」とコメント。一方、みずほリサーチ&テクノロジーズ・門間一夫エグゼクティブエコノミスト(元日銀理事)は、要因は円安だという。「円安で中小企業や家計から悲鳴が上がり、個人消費が弱い原因に。政治家から言われたからではなく、その状況を日銀として重視したのでは」とコメント。日銀が追加利上げを決めたあと、これを予想していなかった金融市場は急激な円高と株安で反応した。これは、日銀が市場とうまくコミュニケーションを取れていなかったからではないかという指摘もある。これについて楽天証券経済研究所・愛宕氏は「日銀と金融市場のコミュニケーションの共通言語は経済データだ」と指摘している。経済指標を見ながら、市場との丁寧な対話が必要だということだが、いずれまた利上げの判断を迫られる局面がやって来る。市場を混乱させないためには、日銀の対話力が問われることになる。