美肌や脱毛など美容のための医療行為を呼びかける広告。しかし想定と違う結果になるトラブルが相次いでいる。顔のしわを目立たなくする美容医療を受けた40代の女性。およそ6万円を支払って注射を受けたあと、顔の腫れやかゆみの症状が出たという。受診する後押しになったのはインターネット上の広告だった。現在は薬を服用して症状はおさまっているが、この医療を受けたことを後悔していると。近ごろ、こうしたトラブルが増えている。美容に限ってみると8000件、ここ6年で4倍に。これらの医療行為の多くは自由診療という形で行われている。これは保険診療と違う。国が有効性を確認して承認したわけではない医療行為でも、医師の裁量で行うことができる。また、公的な医療保険は適用されず全額自己負担。自由診療には美容医療をはじめ歯科矯正や視力矯正などさまざまな分野がある。中でもここ最近問題となっているのが再生医療を巡るトラブル。再生医療を用いた治療法のごく一部は保険適用となっているが、そのほとんどは自由診療を中心に現場で治療として提供されていて、その数6000ほど。しわ、たるみの改善といった美容目的のものだけでなく、脊髄損傷のような重大なけがやがんといった病気の治療なども含まれている。こうした自由診療の再生医療を受けたことが思わぬ結果につながるケースがある。自由診療によるトラブルが増加している背景にはネット上をはじめとした広告が関わっていることが分かってきた。インターネット上の医療機関の広告について調査している団体。自由診療の再生医療を巡る広告である問題点を指摘している。日本インターネット医療協議会・三谷博明代表理事は「厚生労働省から許可、認可を得た、そういう表現がある」と話す。ある再生医療を扱うクリニックのウェブサイトには「厚生労働省承認」「厚生労働大臣許可」と国からお墨付きを得ているかのようだが、いずれも厚生労働省が定める医療広告のガイドラインに違反する表記。このようなウェブサイトは複数、確認されている。なぜこうしたことが起きるのか。国の制度からその背景が見えてきた。再生医療を行う医療機関は外部の専門家などで作る委員会から治療計画の内容の了承を得て国に届け出をする必要がある。国はあくまで届け出を受理するだけで許可や認可は行わない。それにもかかわらず、あたかも国のお墨付きのように事実と異なる記載をする広告が目立つという。さらにガイドラインでは他と比べて優良だとする広告や患者の主観に基づく体験談なども禁止しているが、こうしたことも十分守られていないという指摘もある。三谷代表理事は「放置されている。ここが大きな問題」と語る。医療広告に詳しい国立がん研究センター・若尾文彦医師は4つのポイントを意識して広告を見てほしい。だまされないポイント「お墨付きや権威付け」「ほぼすべてという言葉」「書籍、メディア出演を強調」「セミナーやLINEなどへ誘導」。今週、根本的な解決を目指す動きもあった。それが自由診療の再生医療のうち推奨できるものとそうでないものを区別しようという取り組み。具体的には治療の有効性と安全性を評価するため医療機関が患者のデータを学会のデータベースに登録する。これを学会が検証型診療として推奨する。一方、登録しないものについては無検証診療として区別する。今後、受診する人がどの治療が推奨されているかを確認できる仕組み作りも検討している。
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URL: http://www.jsrm.jp/
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