今月19日、東京都新宿区の春山記念病院に37歳の女性が救急搬送された。女性は美容クリニックで脂肪吸引を行った後出血があり、血圧が低下し意識を失ったという。皮膚の下にたまった血を除去し輸血などの救急処置が行われ、女性は回復に向かった。しかし最悪の場合、命を落とす可能性もあったという。この病院は今年6月に開設された、美容トラブルに特化した24時間態勢の救急外来。今ニーズの高まりと共に美容医療業界が拡大を続け、その裏側で医療過誤や後遺症などの深刻なトラブルが後を絶たないという。美容医療とは見た目の美しさや若々しさを手に入れることを目的とした医療で、しみやシワ、たるみや輪郭の改善まで幅広い施術が行われている。あるアンケートでは10代、20代の半数近くが「美容医療に抵抗感や違和感がない」と回答し、実際に行われた施術の数も4年間で3倍に急増している(厚労省「美容医療に関する現状について」より)。SNS上では美容医療についての情報があふれ、誰もが気軽に美を追求できる時代になった。美容医療には手術を行う美容外科と、注射やレーザーを行う美容皮膚科などの大きく2つがあり、人気施術ランキングでは目を二重にする「二重埋没」や「エラ・小顔ボトックス」が1位となっている(株式会社トリビュー)。その一方で、美容医療を受けて後悔を抱えた人々が美容後遺症外来を訪れていた。東京都文京区の日本医科大学付属病院は約30年前から美容医療の後遺症に対応してきており、朝日林太郎医師は「2020年に比べ患者数は5~6倍になった」などと語った。30代の女性は新型コロナ感染の自宅待機中、暇つぶしにSNSを見ていて興味を持ち、クマ治療の施術に踏み切ったという。薬品を注射することでふくらみが消え、理想の仕上がりになったと思われた。しかしその1年後、笑った時に左右非対称の凹凸が目立つようになった。注射された薬品に問題があり、成長因子が混ざっていたことが原因だという。成長因子とはタンパク質の一種で、やけどなどの傷の治りを早めるために使われている。近年肌の再生能力を高めると注目され、体内に注射するケースがあるという。しかし朝日医師は「厚労省に承認されている治療ではなく、美容医療のガイドラインでも推奨されない治療」と話した。目元への成長因子の注入は、特に被害が多いケースの一つだという。様々な美容医療を経験し成功も失敗も知る50代女性は、成長因子による後遺症に悩まされた経験から「美容モニターはなぜ安いのか考えたほうがいい。知識は大事」などと語った。急増する美容後遺症の背景の一つとされるのが、SNSを活用して患者を集める「キラキラドクター」と呼ばれる存在。直接美容医療にはいる「直美(ちょくび)」がここ10年で10倍に急増する中、その知られざる実態に迫った。
住所: 東京都文京区千駄木1-1-5
URL: http://hosp.nms.ac.jp/
URL: http://hosp.nms.ac.jp/