日本経済新聞・柳瀬和央さんに話を聞く。「お薬自動販売機」実現探る薬剤師ら常駐見直しへ実証事業。現状ではドラッグストアで薬を販売するときは薬剤師を配置しなければならない。規制を見直すかどうか議論が始まっている。柳瀬さんは「日本の人手不足が強まっていくなかで人口が大きく減少した地域では将来、ドラッグストアなど市販薬を取り扱う店舗の維持が難しくなってしまう懸念がある。薬剤師が常駐していない店舗でもデジタル技術を活用することで市販薬を適切に販売し続けることができれば薬を身近なところで入手し続けることができる」などと述べた。デジタル時代の市販薬販売”安全”と”利便性”どう両立。市販薬は医師の処方箋がなくても販売することができる。薬剤師、または登録販売者の資格を持った人が店舗内で対応する。資格を持った人は購入者への情報提供や相談への対応を行うだけでなく、店舗内の薬を管理して適切な陳列や適切な表示を保つ役割を担う。柳瀬さんは「情報提供や相談はインターネットの遠隔対応が可能。店舗を管理することが認められれば、薬剤師が常駐しなくても無資格の人が薬の受け渡しのみ行う店舗の展開が可能になる。この規制緩和に期待しているのがコンビニ。業界団体が提案する仕組みは購入者がスマホなどで薬剤師らに相談できる仕組みを作り薬剤師が販売してもいいということになるとバーコードが発行され購入者がバーコードを提示するとレジの後ろの棚から薬を渡す仕組み」などと述べた。新型コロナウイルス禍の社会的孤立やストレスを背景に咳止め薬や鎮痛剤を多量に飲んで救急搬送される若者が増えている。遠隔対応が認められたとしてもこうした要件は厳しくなるのではないかとみられる。こうした薬剤はネット販売を禁止し対面かオンライン販売に限定する案を検討。柳瀬さんは「ネット販売はメール等でやりとりして購入できる。オンライン販売は映像と音声でリアルタイムで話す仕組み」などと述べた。対面販売にも課題がある。ネット販売だと購入データを蓄積して何度も同じ薬を買う人には販売を中止したりすることも可能。対面販売では患者のデータを照合する仕組みを入れている店舗はほとんどない。柳瀬さんは「薬はリスクの大きさに応じて規制を考える。安全をめぐる議論はインターネットを排除する方向に議論が向かいがち。住民への薬へのアクセスを確保する上でインターネットの活用は利益になる。乱用対策を考える上でもデジタルが有効な手立てになる。二者択一ではなく欠点を補うような規制のあり方を考えて安全と利便性を両立させてもらいたい」などと述べた。(日本経済新聞電子版9月9日付)