今年3月、札幌地裁に事実婚などのカップルが“選択的夫婦別姓に関する訴訟を起こした。選択的夫婦別姓制度”の議論が始まったのは約30年前。1996年、政府は選択的夫婦別姓制度の導入を2度検討したがいずれも法案の提出に至らなかった。そうした状況を受けて初めて集団訴訟を起こされたのは2011年。2015年に最高裁判所の大法廷は夫婦は同じ名字にすることを定めた民法規定について「憲法に違反しない」と合憲の判断を示した。6年後の再審理でも「合憲」と判断された。最高裁が初めて判決を出したときの裁判官・山本庸幸氏は「1つの家族の姓はどうあるべきかというのが基本。95%が夫の姓を選択するというのは慣習の問題」と話し、社会にとってどちらの制度がよいかという議論と憲法違反かどうかの議論は異なると指摘する。一方、4年前の判決で「婚姻の自由や両性の本質的平等を保障する憲法に違反している」と連名で見解を示した元最高裁判事・櫻井龍子氏は「女性が姓を変えるなどいろいろな不利益を被っているという実態、現実、結果に立脚して、平等か平等でないかという評価はすべき問題。夫婦同姓を定める750条の規定は差別的規定」と指摘する。櫻井は旧姓「藤井龍子」として旧労働省で女性局長を務めるなど実績を積み上げたが、最高裁では旧姓の使用が認められず過去の評価を認識してもらえない経験をしたという。櫻井は今の名字の制度がある限り、差別意識は潜在的に残り続けるという。「95%前後の人たちが夫の姓を名乗っている構図は、夫が主で妻が従、夫が外で働き妻は中で家事をやるという役割分担意識を強める。違憲状態という判断を出すというのは最高裁がやらなければならない」と話してくれた。