有珠山は25年前の2000年3月31日に噴火、噴煙は高さ3500mまで達し噴石や地盤の隆起などで約850棟の建物に被害が出た。麓の約1万6000人の住民は事前に避難しており犠牲者はいなかった。有珠山は明治以降20年~30年ほどの間隔で噴火を繰り返しており過去の教訓を継承し次の噴火に備えることが求められている。その中で期待されているのが地域防災のリーダー役を務める火山マイスターと呼ばれる人たち。噴火から25年に合わせて開かれたフォーラムでは当時の対応を振り返り次の噴火へ備えるのが目的だった。パネリストとして参加した川南恵美子さんは、噴火を経験し2009年から火山マイスターとして活動している。有珠山の麓で旅館を経営しており、25年前は噴火の前兆となる地震が始まると子どもたちと避難した。噴火から命を守るには有珠山の特徴を理解する事が欠かせないと考えている。この日は地元の消防団の幹部を対象に公演し、有珠山の変化に気付いて率先して行動し周囲の人達へも呼びかけてほしいと訴えた。有珠山の経験や教訓を語り継ぐこの活動が地域の防災意識を高め次の噴火に備えるために大きな役割を果たすと感じている。噴火を経験していない新たなマイスターも誕生している。去年認定された金田皓樹さんは、学生時代から火山に関心があり秋田県の中学校などで理科の教員として働いていたが2年前に洞爺湖町に移住、洞爺湖有珠山ジオパークの学術専門員として働きながら本格的に有珠山について勉強してきた。金田さんが取り組んだのが有珠山などについてのテキストの作成で、多くの人に有珠山について学んでもらおうと始めた。イラストや最新の写真を多く使い分かりやすいテキストを心がけており、完成したテキストはホームページで公開している。さらにこのテキストを使用したテストも実施、身につけた知識を確認する機会も作っている。試験は50問で、地元ではこの検定の成績を防災や減災の知識を確認する指標としても活用することにしている。金田さんは新たな世代の取り組みが将来に渡って地域を守るために欠かせないと考えている。火山マイスターは2008年に始まった制度で、専門家などの審査で約70人を認定している。