全国的に産婦人科の委員や医師の不足が課題となる中、ことし北海道の倶知安町に新たな産婦人科クリニックが開業した。地域医療を支えようと東京からの移住を決断した医師の思いを取材した。今年1月、倶知安町に新たに開業した産婦人科クリニック。小樽市を除く後志地方で産婦人科施設はここだけ。クリニックには連日後志各地から多くの患者が訪れる。開業したのは横浜市出身の産婦人科医・永井美江さん。長く東京などの病院で婦人科の疾患の治療などにあたってきた。勤務先の病院の関係で10年ほど前から北海道の検診に参加するようになった永井さん。後志の産婦人科施設と女性医師の少なさに危機感を覚えたという。地域医療を支えたいと考えた永井さん。東京の自宅を売り払って倶知安に移住、開業することを決意した。学校や仕事、子育てに追われる女性も通いやすいよう、診療時間は平日の比較的遅い時間や土日などにも設定。小規模なクリニックだからこそ、小さな不安や悩みにも丁寧に向き合う診療を心がけている。永井さんが特に対応が必要だと感じているのが、小中高生の患者の悩み。思春期に多く現れる生理痛などの月経困難症に悩んでいる高校生。通院するようになってから症状が改善したという。ただ、近くに産婦人科がなかったり、なじみがなかったりして受診に至らないケースも多くあるという。こうした症状に悩む小中高生がまだ多くいると感じた永井さん。倶知安町だけでなく周辺の自治体(蘭越町)も訪れ、地域医療に携わる中で感じた危機感を伝えている。「これ以上女性に我慢をさせたくない」と話す永井さん。倶知安町に根を張り、地域医療を支えていく決意を新たにしている。倶知安町はウインタースポーツが盛んな地域で、永井さんは今後、アスリートを目指す女子児童や生徒へのケアも行っていきたいという。