日本のお家芸の一つ、体操。数々の栄光の歴史の中でとりわけ大きな偉業を成し遂げたのが内村航平。2012年のロンドン大会個人総合で金メダル、続くリオデジャネイロ大会で連覇を達成した。前回の東京大会で内村の後を継いだのが史上最年少で個人総合金メダルを獲得した橋本大輝。6種目の合計得点で争う個人総合。優勝者には文字どおり王者の称号が与えられる。橋本選手の持ち味は長い手足を生かしたダイナミックな演技。去年の世界選手権でも優勝を果たした。しかし、橋本選手に強力なライバルが現れた。中国のエース、張博恒。橋本が出場しなかったアジア大会ではすべての種目でほぼノーミスの演技。2位に大差をつけ、優勝した。そこで重点的に取り組んだのが苦手とする、つり輪だった。どの指で強く握れば体が安定するのか。試行錯誤が続きた。そうした中、去年12月、内村航平と対談する機会が訪れた。橋本は憧れの先輩からかけられた「周りは気にせず、自分を貫け」という内村の言葉を胸に4月の大会では圧巻の演技を見せた。課題だった、つり輪もぴたりと体を止めた。