青森・中泊町の旧家・宮越家は江戸時代からこの地域を代表する豪農で、明治維新後には商業や金融にも乗り出した。9代当主・宮越正治は1920年に離れ「詩夢庵」を建造し美術品を収集した。その一つが今回のふすま絵。もとは8面すべてが奈良・桜井市の談山神社にあったとされている。しかし明治維新の混乱の中で売りに出されたとされ、半分の4面は1922年に正治が東京で購入、残りは大英博物館に渡った。「詩夢庵」の美術品は一般的には知られていなかったが、2018年に中泊町が初めて学術調査などを行い、保存活用に乗り出したことで今回の発見につながった。元京都国立博物館主任研究員・山下善也によると、ふすま絵は桃山時代末期と江戸時代初期の文化の特徴を併せ持っているという。山下は「タイムカプセルとして私たちの目の前に立ち現れてくれた素晴らしいものとして意義がある」と話す。12代当主・宮越寛は「これから保存するにはまだいろいろな問題があるので未知のプレッシャーがある」と話す。