レスリング・グレコローマンスタイル60kg級・文田健一郎選手(28歳)。ネコ好きが講じてついた異名は「猫レスラー」。柔軟性を活かした文田選手の最大の武器は、投げ技。投げ技が決まれば、最大5ポイントの高得点となる。レスリング・グレコローマンスタイルは、下半身へのタックルなど全身への攻撃が可能とされるフリースタイルに対して、上半身のみの攻防となる。小学4年生でレスリングをはじめた文田選手。グレコローマン選手だった父の影響で投げ技に魅了されていった。2016年・2017年、全日本選抜選手権連覇をした。2017年世界選手権では、日本人史上最年少優勝を記録更新した。19年には世界チャンピオンとなった。銀メダルに終わった東京五輪では、多くの人にグレコローマンの魅力を伝えたかったという。再びレスリングに向かう原動力になったのは、家族の存在だった。奥さんは食事面でもサポートしていた。きつい減量期間も気持ちだけは、切れないようにと工夫された手料理。こうしてパリへと歩みだした文田選手。東京五輪の雪辱をはらすために必要なもので、導き出した答えは投げ技を封印だった。勝つためだったら守るという。去年7月、磨いてきた守りのスタイルで熾烈な国内選考を勝ち抜き、世界選手権への切符を手に入れた。しかし、その心中は「おもしろいことはほとんどない。」と話していた。