千葉県は酪農が盛んなうえ乗用馬を育てる牧場も数多くある。今回は訪れたのは南房総市にある「千葉県酪農のさと」。実は南房総市は近代酪農発祥の地で、全国でも珍しい白牛がいる。およそ300年前、外国種のこの白牛を南房総市周辺で飼育し始めた。当時、徳川吉宗が白牛の乳は国民の健康増進につながると考えたために導入したと伝わっている。現在、搾乳はしていないが発祥の地のシンボルとして大切に育てられている。そんな白牛の牛乳は当時、白牛酪という食べ物にして食べられていた。材料は白牛の乳ときび砂糖。牛乳を鍋に入れて中火で加熱し、焦がさないようにへらを前後に動かしつつ煮詰め湯気が出てきたら弱火にする。牛乳が半分くらいまで減ったらきび砂糖を加え、混ぜ始めることおよそ45分。カスタード状になったら引き上げ型に入れて乾燥させたら白牛酪の完成。千葉・富里市は競走馬の育成牧場や多くの乗馬クラブがあり馬を愛する文化が根づいている。この町に乗馬に欠かせないくらを作る馬具職人がいると聞き訪ねた。作業していたのはこの道60年の馬具職人、池上豊さん。構造が複雑なくらを作るのは熟練の技が必要で、すべての工程を1人でこなせる職人は全国でも数少ない。そんな中、去年池上さんに待望の弟子ができた。地元出身の新垣志穂さん。のどの病気で声が出ない池上さんは、弟子とのやり取りを筆談で行っている。この日、池上さんのもとに修理の依頼が入った。足を正しい位置に固定するニーブロックという部品の糸がほつれて、くら本体から外れかけている。これをすくい縫いという縫い方で直していく。曲がったきりで穴を開けその穴の角度に合わせて曲がった針を通していく。カーブした穴にカーブした針を使って糸を通すには高い技術が必要。綿を詰めているのは馬の背中の負担を和らげるあん辱というクッションの部分でへたっていると馬が痛がってしまうそう。池上さんは人間にとっても馬にとっても快適なくらが馬本来の力を引き出すと考えている。池上さんは新垣さんに自分の技術をすべて引き継いでいきたいと考えている。