ベテラン棋士との対局に挑んだこの日、一力さんは対局を振り返りAIの最善手に違和感を感じた。一力さんは6年前に囲碁AIが実用化されたときからAIを使って研究してきた。しかし、AIも自分もまだ最適解にたどり着けていないと考えている。一力さんは2年前からAIを使った取り組みメンタルトレーニングをはじめている。過去の対局を振り返った過去のノートを使う。一力さんの一手をAIで分析・評価しているグラフが書かれているが、AIとのズレを確認し自分の中に不安や焦り、気持ちのゆるみがなかったかを確認する。一力さんは必ずしも自分の判断をAIに近づけようとしていない。まだ発展途上のAIとともに新たな手筋を開拓しようとしている。努力の積み重ねが実ったのが応氏杯での活躍だった。一力さんはAIも想定していなかった独創的な手で相手を追い込み勝利した。