2024年11月12日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
世界を獲った“改革力” 若き棋士が導く伝統の進化

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
若き棋士の“改革力” 19年ぶりの世界一

囲碁界の若きエース・一力遼九段。今年、囲碁の世界大会で優勝し、日本勢として19年ぶりの世界一となった。伝統ある囲碁界の常識を変え、新たな地平を切り開いてきた一力さんの改革する力に迫る。

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オープニング

オープニング映像。

世界を獲った“改革力” 若き棋士が導く伝統の進化
世界のイノベーター 囲碁との意外な接点

アインシュタインやビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、イチロー、それまでの世界の常識を覆すような偉業を成し遂げた。いずれも囲碁好きで知られている。山中伸弥さんも囲碁好きで革新的な研究と囲碁の戦術には似ているところがあるという。囲碁の世界の競技人口は4000万で野球より多いという。主要な世界大会の優勝国はこの10年、中国・韓国の2強時代が続いていた。そんな中で今年世界一となったのが日本の一力遼九段。勝利のカギを握った囲碁界の改革とは?

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若き棋士の“改革力” 伝統のその先へ

中国で開催された応氏杯。賞金額は世界最高峰。囲碁界のオリンピックとされる最高峰のタイトル戦。決勝戦に挑んだ一力遼九段、相手は中国の謝科九段。一力さんがこれまで勝ったことのない強敵。囲碁は打ち手の選択肢が多いとされる知的格闘技。碁盤に黒と白の碁石を交互に打ち、陣地を取り合う。相手の石を囲むと自分の陣地にすることができる。より広い陣地を確保した方が勝つゲーム。天文学的な打ち手のパターンがあり、AIでもそのすべては解析されていない。一力さんはAIが読み切れなかった一手を打ち、今回19年ぶりの世界一を勝ち取った。

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一力遼中国第10回 応氏杯世界選手権謝科

かつて日本は決勝常連の囲碁大国だった。主要な世界大会での国別優勝数で中国や韓国が 躍進する一方で日本は2005年を最後に全く勝てなくなった。中国や韓国は囲碁をスポーツと位置づけて国をあげて棋士を育成する仕組みを作ってきた。一方で日本は伝統的な価値観の中で個人の努力をよしとしてきた。戦術面でも中国や韓国は合理性を追求、日本は次第に突き放されていった。その状況を打破しようと立ち上がったのが一力さん。ある改革を実現した。日本代表クラスの棋士たちが集まる研究会で若手もベテランも対局する場を新たに設けた。対局数のノルマを課し、メンバーの入れ替え制を導入、より切磋琢磨できるようにした。ベテラン棋士の中には若手に混じって研究することに意味が見いだせないと否定的な声もあったという。改革の効果は大きなものだった。プロ2年目の桑原二段のこの日の対局相手は一力さん。桑原さんのような若手棋士がタイトルホルダーの棋士と対局する機会はこれまでほとんどなかった。一力さんは格下相手でも力を緩めない。対局の後に必ず行う感想戦、ー力さんはこの時間こそが改革の要だと考えている。一力さんはその対局の勝ち筋だけでなく戦術まで伝えようとしている。ー力さんの改革の源流にはある先輩の存在があった。史上初七冠、国民栄誉賞を受賞した井山裕太九段。6年前に井山さんは若手を育てようと一力さんたちに声をかけ、研究グループを作った。その思いを引き継いだ一力さんが立ち上げた研究の場。この日の対戦相手はプロ6年目若手の福岡航太朗さん。AIを駆使し新しい研究をしてきた若手の発想には一力さんも学ぶことがあるという。3時間を超す熱戦ののち、勝利したのは福岡さんだった。

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一力遼

囲碁ライターの品田渓さんは一力さんの改革によって、チームとしての一体感と緊張感が生まれた、若手もベテランも切磋琢磨できる環境ができただけでなく成績によって降格する緊張感もあるという。国内の囲碁人口はこの10年ほどで6割ほど減っている。これにあわせて大会規模が縮小したり、賞金額が減少したりしている。改革が進まなかったのには棋道という考え方が関わっている。棋道とは美しく勝つ、潔く負ける、結果よりも内容という碁のきわめるべき道のこと。品田渓さんは棋道は一人で突き詰めていくというような風潮だという。

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一力遼
AIとともにまだ見ぬ一手へ

ベテラン棋士との対局に挑んだこの日、一力さんは対局を振り返りAIの最善手に違和感を感じた。一力さんは6年前に囲碁AIが実用化されたときからAIを使って研究してきた。しかし、AIも自分もまだ最適解にたどり着けていないと考えている。一力さんは2年前からAIを使った取り組みメンタルトレーニングをはじめている。過去の対局を振り返った過去のノートを使う。一力さんの一手をAIで分析・評価しているグラフが書かれているが、AIとのズレを確認し自分の中に不安や焦り、気持ちのゆるみがなかったかを確認する。一力さんは必ずしも自分の判断をAIに近づけようとしていない。まだ発展途上のAIとともに新たな手筋を開拓しようとしている。努力の積み重ねが実ったのが応氏杯での活躍だった。一力さんはAIも想定していなかった独創的な手で相手を追い込み勝利した。

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一力遼中国第10回 応氏杯世界選手権

一力さんのAIとの向き合い方について、囲碁ライターの品田渓さんはAIの受け止めがポジティブだと思う、敵対するものではなくパートナーとしてみているようだとした。優勝した世界大会の決勝では国内ではライバルの棋士が研究パートナーとして同行した、国内ではライバルなので一力さんも勇気がいることだったと思うが、ライバルの力をパワーにして結果をだした。品田さんは一力さんは現状を分析する目はとてもクールだが、一方で情熱的な部分があるという、冷静な頭と熱い心があればAIともうまく付き合っていけるのではないかと思うと話した。

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一力遼謝科

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