2024年10月29日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
私の年金足りますか? 女性の“老後リスク”にどう備える

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
“年金だけでは不安” 女性の老後リスク

今多くの人が不安を感じている「年金」。実は女性に大きなリスクがある。国の最新の試算によると、全ての世代で女性の年金は男性より月約4~5万円低いという。専門家は老後の準備を始めるには40代・50代がギリギリのところと話した。安心して老後を迎えるために今何ができるのかを考える。

キーワード
厚生労働省年金
#4942 私の年金足りますか?女性の“老後リスク”にどう備える

年金について国は5年ごとに受給の見通しを発表している。これまでは世帯単位の発表だったが、今年7月に初めて個人単位、性別や世代ごとの見通しが示された。今年度50歳になる人が65歳になった時に受け取る年金額は平均で男性は14万1000円、女性は9万8000円。65歳以上で一人暮らしの人の1か月あたりの生活費が平均で約14万5000円とされているため、どちらも届いていない。40代後半の佐々木瞳さん(仮名)は実家で母親と二人暮らしをしている。現在、中国地方の企業で事務員として働いており、将来受け取る年金の見込み額を調べると、月11万円ほどだった。日本の公的年金制度は2階建てと言われ、1階部分は加入を義務付けられている国民年金。2階部分は会社員・公務員などが加入する厚生年金。厚生年金は収入や加入期間によって受け取る年金額が変わる仕組みで収入が低く、加入期間が短くなるほど受け取る年金が低くなる。佐々木瞳さんは短大を卒業後、すぐに就職して25年以上厚生年金に加入してきた。今の会社で正社員として働き、11年目になる。しかし、基本給は14万円台、入社してから1万円くらいしか上がっていない。職場では男性が次々と昇格する一方、女性にその機会はほとんどなかったという。佐々木瞳さんの年収は約240万円。その結果、厚生年金の見込み額は約4万3000円にとどまっている。年金を増やすためにも転職を希望しているが、要介護3の母親がいるため、難しいという。ウーマンライフパートナー・代表理事の中村真佐子さんは65歳を迎えて本当に困った時に相談しても中々解決には至らない。そういう人が増えると生活困窮の相談者が増える。危機感を感じていると話した。

キーワード
厚生年金国民年金年金

番組に寄せられた年金への不安の声。中でも多かったのは非正規雇用で働いてきた女性たちの意見だった。神奈川県で暮らす茂木直子さん(51歳)。これまで約20年に渡って非正規の仕事を転々としてきた。65歳で受け取れる年金の見込み額は月10万円あまり。専門学校を卒業後、正社員として就職したが、会社は倒産。生活のために派遣社員として働き始めた。12年前、語学旅行を活かして勤め始めた外資系の銀行では契約社員までステップアップ。しかし、事業の縮小に伴って仕事を辞めざるを得なくなったという。その後も正社員の仕事は見つからず、非正規雇用の職場を渡り歩いている。非正規雇用が長い女性は厚生年金の加入期間が途切れることが多く、結果的に年金額が低くなる傾向にある。さらに離婚によって老後のリスクが一気に高まる女性も少なくない。ファイナンシャル・プランナーの加藤葉子さんは女性の老後の生活設計などについて、年間800人以上の相談を受けている。相談者の大半は結婚や出産をきっかけに仕事を辞めている。家事や育児を担って仕事を辞めてしまうことで厚生年金に入っていない期間が長くなり、年金額が低くなる。しかも多くの女性たちが老後の備えに手を回すことができていないという。2年前に離婚した50代のシングルマザーは離婚した夫から養育費を受け取っているが、子どもは高校生と大学生になり、教育費の負担が重くなっている。自分の老後に備える余裕はないという。老後を年金だけで暮らす場合、いくら不足するのかを試算すると、80歳で1600万円、90歳で2800万円不足するという結果になった。女性は70歳までは絶対に働かなければいけないと覚悟していると話した。

キーワード
厚生年金国民年金年金
“年金だけでは不安” 女性の老後リスク/年金は増やせる? 老後リスクへの備えは

坊美生子さんはこれまでは夫婦であれば女性が低年金でも夫の年金があるため、暮らすことができた。しかし、近年は生涯未婚の人や離婚する人などが増えている。そのため、女性個人の年金が低いことが非常にリスクが高いということになっていると話した。また、男女の賃金格差や男女の性別役割分業も大きい問題。育児を終えた中高年の女性の場合、再就職するとなると非正規になる人が多い。井戸美枝さんは今の生活費と退職後の生活費を知ることが大事。今の生活費と退職後の生活費を比べて、70%くらいにコストを抑えるのが一番良いと話した。公的年金シミュレーターなどで年金額を把握することも大事。年金を増やすには厚生年金に入って長く働くこと。今は70歳まで企業も努力義務になっているため、長く働ける環境を選んで働くことが大事だという。国は今月から従業員51人以上の企業で働くパートなどの短時間労働者にも厚生年金が適用されるようにした。

キーワード
公的年金厚生労働省厚生年金年金総務省
年金は増やせる? 老後リスクへの備えは

7年前に創業した従業員100人のIT関連のグループ企業は当初、全員がパートだったが、今では4割が正社員・契約社員として厚生年金に加入している。力を入れてきたのがキャリアアップの希望調査。この日はパートからの昇格を希望している女性の面談が行われた。女性は来年から契約社員として働くことが決まり、新たに厚生年金にも加入する。厚生年金の保険料は企業と従業員が半額ずつ支払う。加入する従業員が増えれば、企業の保険料負担も重くなる。この企業が負担する保険料は年々増加。契約社員と正社員38人分、年間約560万円にのぼる。一方で会社の売り上げも上昇を続けていて、昨年は年商4億円に達した。それを可能にしたのが大きな仕事を任せられる社員の増加。現在、正社員の長田美咲さんはパートで入社した当時の収入は月9万円。子どもの教育費だけでなく、老後の備えにも不安があったという。4年前、正社員となり、今ではフルタイムで働いている。11人が所属する事業部のマネージャーに就任、予算規模の大きいプロジェクトを任されるまでになった。現在の月収は25万円あまりになったという。高い利益が出せる仕事を担う人材が増えれば企業は成長する。社長の井上拓磨さんは従業員の待遇改善が不可欠だという。

キーワード
はたらクリエイト上田(長野)厚生年金年金
年金は増やせる? 老後リスクへの備えは/“年金だけでは不安” いま求められるもの

女性の厚生年金を底上げするために企業に求められる役割について、坊美生子は男女の賃金格差の縮小が大事。今後は性別に関わらず、家事・育児・介護などの事情がある人も働きやすいようにすることが大事などと話した。井戸美枝は年金は基本的に65歳から受け取ると100%だが、75歳まで受け取る年金を遅くできる。そうすると1か月繰り下げると0.5%ずつ増えた年金が一生受け取れる。繰り下げ受給を利用することも考えて欲しいと話した。年金が足りない、生活に困っている時は各自治体の自立支援相談機関の窓口に相談したり、医療・介護保険料の減免を受けることができる。井戸美枝は年金の仕組みを教育現場でも伝えてほしいなどと話した。坊美生子は多様化が進んでいる中で今後、全ての人の老後を年金だけで支えるのは無理。個人は新しい仕事にチャレンジする、企業は色んな人の能力が発揮しやすいマネージメントをしていく。シングルマザーや病気の人には手厚くサポートすることが必要などと話した。女性の低年金について、厚生労働省はこの数字が出たことをきっかけに厚生年金の適用拡大などをさらに進め、男女問わず年金の給付水準の確保に取り組んでいくとコメントした。

キーワード
厚生労働省厚生年金年金

© 2009-2025 WireAction, Inc. All Rights Reserved.