3年前、三笘は自らの成長を求めイギリス・ブライトンへ。三笘にホームスタジアムを案内してもらった。そして3シーズン目を終えた翌日、三笘はインタビューに応じた。この1年については、「自分の中で成長のきっかけがはっきりとわかったシーズンだった」と振り返る。さまざまな形で勝利に貢献できたことも示せたと語った。イングランド・プレミアリーグは、アーリング・ハーランドやモハメド・サラーなど、世界的なスター選手が集うリーグ。昨年8月に始まった新シーズンでも、三笘は開幕戦からセンセーショナルな活躍を見せた。ハードなプレーをいとわない彼は、「ワールドカップ優勝が大きな目標。そのために日々努力している」と意気込みを語った。
2022 FIFAワールドカップで三笘は、途中出場で流れを変える切り札としてピッチへ。最大の武器であるドリブルで次々とチャンスを創出。中でも、その名を一気に広めたのがスペイン戦のプレーだった。ゴールラインぎりぎりで放ったクロスボールは「三笘の1ミリ」と称され、日本をベスト16進出へと導いた。しかし、ベスト8進出をかけたクロアチア戦では、サッカー人生最大の挫折を味わう。1-1の緊迫した状況でピッチに入り、延長終了間際には最大のチャンスが訪れるも、ゴールを決めきれなかった。そしてPK戦では、三笘が痛恨の失敗。日本は惜しくも敗退した。当時を振り返り、「負けたときの景色や感情はずっと残っている。今後のサッカー人生にとっても、きっと消えないものになると思う」と語った。
チームを勝利に導く絶対的な存在になるために、今シーズン、三笘が特に意識して取り組んできたのが「激しい守備」だった。「自分が今後サッカー選手として成長していくうえで、守備は間違いなく足りない部分だった。試合に勝つために、何をすべきかを考えてプレーしている」と語る。そんな三笘と対戦する機会が多い遠藤航も、「守備への意識は確実に高くなっている」と評価する。その成長はデータにも明確に表れていた。ロンドンにあるサッカーのデータ分析会社によれば、三笘がボールを持った相手にプレッシャーをかけた回数は、1シーズン目と比べて今季は約1.5倍に増加していた。
一方、攻撃面では「得点を決めきること」に強くこだわり、今シーズンは10得点を目標に掲げていた。しかし、持ち味であるドリブルが封じられ、3ヶ月にわたって無得点が続く。シーズン前半を終えた時点での得点はわずか3点にとどまり、取材する記者たちの間でも厳しい声が上がり始めていた。前半戦での焦りや危機感について、三笘は「もちろんあった」としながらも、「焦っても何も変わらない。だからこそ、これまでのプレーをしっかり分析して、ここからどうやって結果を出すかを考える時間は、マインドとしてすごく面白かった」と前向きに振り返った。
ドリブルが警戒される中、どうすれば得点を奪えるのか。実は三笘がシーズン当初から意識してきたのが、「オフ・ザ・ボール」の動きだった。相手の動きに応じて自らの動きを調整し、パスの出し手とタイミングを合わせる。その動きが身につけば、得点力はさらに高まると考えていた。壁にぶつかったとき、正面から向き合い、乗り越えていく力。その原点は、少年時代にあった。三笘を小学生時代に指導していた高崎康嗣さんは、「当時の三笘はドリブルよりも、パスでゲームを作るタイプだった」と振り返る。だからこそ、「薫には1人で局面を変えられる選手になってほしい」と、あえて高い要求を突きつけたという。三笘はその言葉を胸に、毎日コツコツとドリブルの練習に打ち込んだ。何百回、何千回と繰り返し、自分の武器を磨き上げていった。そしてそのドリブルが、彼のキャリアを切り開いていく。大学2年生でJ1クラブに挑んだ天皇杯では、60メートルを駆け抜けるドリブルからシュートを決め、鮮烈な印象を残した。その後、川崎フロンターレに進むと、ルーキーイヤーから13得点・12アシストをマークした。
今シーズン、三笘が掲げた目標は「得点力の向上」。ドリブルだけに頼らず得点するため、トレーニングでは「オフ・ザ・ボール」の動きに磨きをかけた。試合でも、その動きを繰り返し実践してきた。三笘は、得意のドリブルが制限されることへの歯がゆさは感じていないという。「勝利に貢献することが最優先。出場機会を得るためにも、プレーを変え、さまざまなことに挑戦していく。たとえ結果がすぐに出なくても、その過程を最終的に良い形につなげていく努力が必要」と語った。1月、シーズン後半戦の開幕とともに、三笘は約1ヶ月半ぶりとなるゴールを決めた。さらに次の試合でも連続ゴールを記録。チームのエース、ダニー・ウェルベックもその進化を認め、「三笘が走り込んで危険なエリアに入ったのは、とても賢いプレーだった」と高く評価。そのプレースタイルの変化は、データにもはっきりと表れている。試合ごとのボールタッチ数をプレーエリア別に昨シーズンと比較したところ、主にドリブルを仕掛けていた左サイドでのボールタッチは減少。一方で、「オフ・ザ・ボール」の動きによって生まれたゴールに近いエリアでのボールタッチは増加していた。専門家は、「三笘の強みはもともと、ドリブルでディフェンダーを抜いてチャンスをつくることだった。しかし今は、自らがチャンスを決める位置にいる。まるでストライカーのような動きになっている」と分析。
ブライトンで愛される三笘。ユニフォームの売れ行きも好調で、今季は三笘の名前入りシャツが5300枚も売れたという。移籍報道が出る中、地元ファンからは名残惜しむ声も聞かれた。そんな中、2月に行われた強豪チェルシー戦で、三笘はロングパスを受けてゴールを決める。パスを出したバルト・フェルブルッヘンは、「三笘が準備できているのが見えた」と振り返る。さらに、「あのプレーには「マジック」という言葉を使いたい」と、そのすごさを称賛した。また、このゴールには、ボールをコントロールする三笘の高度な技術が凝縮されていた。
5月、リーグ戦は残り2試合。三笘はここまで9得点とし、掲げていた目標の10得点まであと1点に迫っていた。迎えたホーム最終戦、三笘はベンチからのスタート。前半を終えてスコアは1-2。ブライトンはリードを許し、苦しい展開が続いていた。後半20分、三笘がピッチへ。すると出場からわずか4分後、待望のゴールを決め、目標としていたシーズン10得点をついに達成。チームもそのまま逆転に成功し、ホーム最終戦を最高の形で締めくくった。シーズン終了後の年間表彰式では、チェルシー戦でのゴールがクラブの「最優秀ゴール」に選出された。三笘は、「自分自身、もっと能力を高めて、どんな相手にも通用する選手になりたい。伸びしろはまだまだ果てしなくある」と成長への意欲を語る。そして、思い描く最高の景色については、「優勝はもちろん目指したい。でも、そのことで国民の皆さんが喜んでくれる姿が、いちばん大事だと思っている」と、語った。
2022 FIFAワールドカップで三笘は、途中出場で流れを変える切り札としてピッチへ。最大の武器であるドリブルで次々とチャンスを創出。中でも、その名を一気に広めたのがスペイン戦のプレーだった。ゴールラインぎりぎりで放ったクロスボールは「三笘の1ミリ」と称され、日本をベスト16進出へと導いた。しかし、ベスト8進出をかけたクロアチア戦では、サッカー人生最大の挫折を味わう。1-1の緊迫した状況でピッチに入り、延長終了間際には最大のチャンスが訪れるも、ゴールを決めきれなかった。そしてPK戦では、三笘が痛恨の失敗。日本は惜しくも敗退した。当時を振り返り、「負けたときの景色や感情はずっと残っている。今後のサッカー人生にとっても、きっと消えないものになると思う」と語った。
チームを勝利に導く絶対的な存在になるために、今シーズン、三笘が特に意識して取り組んできたのが「激しい守備」だった。「自分が今後サッカー選手として成長していくうえで、守備は間違いなく足りない部分だった。試合に勝つために、何をすべきかを考えてプレーしている」と語る。そんな三笘と対戦する機会が多い遠藤航も、「守備への意識は確実に高くなっている」と評価する。その成長はデータにも明確に表れていた。ロンドンにあるサッカーのデータ分析会社によれば、三笘がボールを持った相手にプレッシャーをかけた回数は、1シーズン目と比べて今季は約1.5倍に増加していた。
一方、攻撃面では「得点を決めきること」に強くこだわり、今シーズンは10得点を目標に掲げていた。しかし、持ち味であるドリブルが封じられ、3ヶ月にわたって無得点が続く。シーズン前半を終えた時点での得点はわずか3点にとどまり、取材する記者たちの間でも厳しい声が上がり始めていた。前半戦での焦りや危機感について、三笘は「もちろんあった」としながらも、「焦っても何も変わらない。だからこそ、これまでのプレーをしっかり分析して、ここからどうやって結果を出すかを考える時間は、マインドとしてすごく面白かった」と前向きに振り返った。
ドリブルが警戒される中、どうすれば得点を奪えるのか。実は三笘がシーズン当初から意識してきたのが、「オフ・ザ・ボール」の動きだった。相手の動きに応じて自らの動きを調整し、パスの出し手とタイミングを合わせる。その動きが身につけば、得点力はさらに高まると考えていた。壁にぶつかったとき、正面から向き合い、乗り越えていく力。その原点は、少年時代にあった。三笘を小学生時代に指導していた高崎康嗣さんは、「当時の三笘はドリブルよりも、パスでゲームを作るタイプだった」と振り返る。だからこそ、「薫には1人で局面を変えられる選手になってほしい」と、あえて高い要求を突きつけたという。三笘はその言葉を胸に、毎日コツコツとドリブルの練習に打ち込んだ。何百回、何千回と繰り返し、自分の武器を磨き上げていった。そしてそのドリブルが、彼のキャリアを切り開いていく。大学2年生でJ1クラブに挑んだ天皇杯では、60メートルを駆け抜けるドリブルからシュートを決め、鮮烈な印象を残した。その後、川崎フロンターレに進むと、ルーキーイヤーから13得点・12アシストをマークした。
今シーズン、三笘が掲げた目標は「得点力の向上」。ドリブルだけに頼らず得点するため、トレーニングでは「オフ・ザ・ボール」の動きに磨きをかけた。試合でも、その動きを繰り返し実践してきた。三笘は、得意のドリブルが制限されることへの歯がゆさは感じていないという。「勝利に貢献することが最優先。出場機会を得るためにも、プレーを変え、さまざまなことに挑戦していく。たとえ結果がすぐに出なくても、その過程を最終的に良い形につなげていく努力が必要」と語った。1月、シーズン後半戦の開幕とともに、三笘は約1ヶ月半ぶりとなるゴールを決めた。さらに次の試合でも連続ゴールを記録。チームのエース、ダニー・ウェルベックもその進化を認め、「三笘が走り込んで危険なエリアに入ったのは、とても賢いプレーだった」と高く評価。そのプレースタイルの変化は、データにもはっきりと表れている。試合ごとのボールタッチ数をプレーエリア別に昨シーズンと比較したところ、主にドリブルを仕掛けていた左サイドでのボールタッチは減少。一方で、「オフ・ザ・ボール」の動きによって生まれたゴールに近いエリアでのボールタッチは増加していた。専門家は、「三笘の強みはもともと、ドリブルでディフェンダーを抜いてチャンスをつくることだった。しかし今は、自らがチャンスを決める位置にいる。まるでストライカーのような動きになっている」と分析。
ブライトンで愛される三笘。ユニフォームの売れ行きも好調で、今季は三笘の名前入りシャツが5300枚も売れたという。移籍報道が出る中、地元ファンからは名残惜しむ声も聞かれた。そんな中、2月に行われた強豪チェルシー戦で、三笘はロングパスを受けてゴールを決める。パスを出したバルト・フェルブルッヘンは、「三笘が準備できているのが見えた」と振り返る。さらに、「あのプレーには「マジック」という言葉を使いたい」と、そのすごさを称賛した。また、このゴールには、ボールをコントロールする三笘の高度な技術が凝縮されていた。
5月、リーグ戦は残り2試合。三笘はここまで9得点とし、掲げていた目標の10得点まであと1点に迫っていた。迎えたホーム最終戦、三笘はベンチからのスタート。前半を終えてスコアは1-2。ブライトンはリードを許し、苦しい展開が続いていた。後半20分、三笘がピッチへ。すると出場からわずか4分後、待望のゴールを決め、目標としていたシーズン10得点をついに達成。チームもそのまま逆転に成功し、ホーム最終戦を最高の形で締めくくった。シーズン終了後の年間表彰式では、チェルシー戦でのゴールがクラブの「最優秀ゴール」に選出された。三笘は、「自分自身、もっと能力を高めて、どんな相手にも通用する選手になりたい。伸びしろはまだまだ果てしなくある」と成長への意欲を語る。そして、思い描く最高の景色については、「優勝はもちろん目指したい。でも、そのことで国民の皆さんが喜んでくれる姿が、いちばん大事だと思っている」と、語った。