篠山紀信さんが先月、老衰のため83歳で亡くなった。亡くなる2週間前の最晩年まで歌舞伎俳優の撮影をしていた。去年12月下旬、歌舞伎座の公演のポスター撮影で、篠山さんは中村勘九郎さんを静かに撮影していた。中村さんは「父の13回忌のポスターを撮ってと言ったら来てくださった」などと話す。歴史に名を残す人物からアイドル・俳優まで、「写真力」と題して7年かけて全国を巡回する大規模な個展も開いた。歌舞伎も撮影していた篠山さんは、歌舞伎界きってのスター中村勘三郎さんから厚い信頼を受けていて、舞台に篠山さんを上げてしまったこともあった。勘九郎さんは「自信がない役でも篠山さんが撮った写真を見ると”いいじゃん”と勇気をもらえた」などと話す。篠山さんの最後の被写体となった勘九郎さんの写真は、撮影が終わり”役から離れる一瞬”を捉えたものだった。篠山さんは写真家として最後まで現役を貫いた。