きょうの注目記事は先月15日の日本経済新聞朝刊の「女性参加が導く平和」という記事。戦争に関連する様々な場面で女性の参画を進める「WRS」という取り組みを取り上げている。テーマは「浸透するか『WPS』戦争防ぐ女性の役割」。「WPS」は英語で女性・平和・安全保障の3つの頭文字をとって合わせた言葉。これまでは戦争といえば力の強い男性だけが戦争を始めたり終わらせたりを決めてきたが、紛争では性暴力を含めて女性が犠牲を強いられる面も強く、女性が様々な場面に積極的に参画していく考え方。ウクライナではロシア軍が女性に対する性暴力を起こしたことが明らかになり世界に衝撃が走った。このために妊娠・出産した人も少なくないと言われているし、中東でも同じようなことが起こっている。戦闘から避難する人も女性が多く、どのように女性の被害を抑えていくかWPSの概念が重要。冷戦が終わった1990年代に世界中で紛争が増え、そのなかで旧ユーゴスラビアやアフリカなどで多くの女性が性暴力にさらされた。そうじた事態を防ぎ紛争後の社会の安定させるためには女性が積極的に取り組みに参加する考えが広がり2000年に国連安保理で1つの決議が出た。災害の対応でも女性の目線が必要だという声が強まっている。アメリカ・ヨーロッパで作っているNATOでは軍における女性の比率が13%。NATOはアフガニスタンで2021年に撤退するまで20年ほど展開していたが、そこでは男女の行動が限られていた。現地の習慣を重んじて妊婦への医療活動など女性だけのチームを作り医療活動をする工夫をしてきた。女性との関係で現地での文化や宗教に目を配ることも大事。日本でも主要国と同じように進めている。今年3月時点で女性の自衛官の比率は8.9%まで上がっている。とはいえまだ幹部クラスが少なくハラスメントも後を絶たない状況がある。女性自衛官への性加害で男性の同僚が有罪判決を受けたこともあり、防衛省の職員は自衛隊全体でWPSを浸透させるのは時間がかかりそうなので災害派遣におけるWPSに力を入れるべきではないかと意識改革の遅れを認めている。次期総理の候補と言われている上川外務大臣がWPS主要外交政策の1つと位置づけて発信を続けている。しかし先日沖縄で発覚したアメリカ兵による女性への性的暴行事件では外務省は既存の仕組みに従わず沖縄県に連絡しなかったことがあるし、外国の他人事のような感じがするのでこれではなかなか政府の旗振り役は難しい。フィリピンのミンダナオでは内戦が終わり来年に自治を始めるが、ここでは来年の選挙に向けて各政党が候補を出すのは最低30%は女性にしないといけないとしている。日本は現地で復興の支援を積極的にやっているが、助けるという上から目線だけでなく現地から学ぶことも大事になる、などと伝えた。(日本経済新聞)