多くのライダーが集まる神奈川県の峠道、バイクに取り付けられているのは補助輪で、乗るのは病気や事故で下半身に障害があるライダー。走るのは安全対策が施された貸し切りの有料道路。障害のある人でもバイクを楽しめるイベント。運営しているのは青木治親さん49歳。青木さんがこの活動を始めたのは7年前で、サポートしてきたライダーは200人を超える。青木さんはプロのバイクレーサーであり全国のレース場で活躍している。その傍ら、障害のある人がどうすれば安全に走行できるのか試行錯誤を続けてきた。転倒を防ぐ補助輪はイベントで使用するためメーカーに頼んで特別に改造した。イベントを始めたきっかけは同じくプロのレーサーである兄・拓磨さんの存在。練習中の事故で下半身が不自由になり車いす生活を送っていた。再び兄にバイクに乗ってもらいたいと上半身だけで運転が出来るように改造、サーキットで走ることが出来た。障害や病気でバイクに乗ることを諦めた多くの人々から問い合わせが殺到した。青木さんが相談を受けたライダーの中には視覚に障害がある人も。金子祐二さん48歳は4年前に目の難病である網膜色素変性症と診断され医者から公道でバイクに乗ることを止められている。元々アメリカにツーリングに行くほどのバイク好きで、青木さんにイベントに参加したいと声をかけた。青木さんはヘルメットにマイクとスピーカーを取り付け、サポート役のライダーと無線でコミュニケーションが取れるよう工夫した。金子さんがスタート、前にはサポートライダーが先導して挑戦を見守る。青木さんは、「諦めてることいっぱいあると思うがオートバイほど難しくないと思うと何でもできたり、ハードルが下がっていく。その人にとって家から出る一歩が我々の活動で希望を持てたらいい」と話した。
