数多ある電子楽器の元祖が、テルミン。最大の特徴は、手の動きで音の高低・音量を調節すること。アンテナからでる電波に手をかざすことで干渉し、生じる周波数のうねりがスピーカーを通して音となる仕組み。発明したのはレフ・テルミン博士で、100年ほど前のこと。コンデンサにかかる圧力の変化で発する音が変化することに注目し、楽器に応用をすることを思いついた。テルミンは初めて演奏されると好評を博し、翌1921年に全ロシア電子技術会議で発表された。注目したのがウラジーミル・レーニンで、電化政策を推進するプロパガンダに利用された。テルミン博士は、1927年にアメリカに渡り特許を取得し、RCA社にテルミンの製造販売権を譲渡した。1938年にソビエト連邦に帰国すると、アメリカでの活動が反革命組織への参加という罪に問われ逮捕され、シベリアで強制労働に従事させられるなど、時代に翻弄された人生だった。テルミンは、シンセサイザーの登場により人気が下火になるも様々なアーティストを刺激した。ジミー・ペイジもライブで愛用した。依頼品はRCA社が製造したテルミンで、500台しか製造されなかった。鑑定するのは三枝文夫。