2019年に脱北したイ・スクチョンさんを取材。イさんは20代の頃、砂金を売った資金を元手に中国からたばこや日用品を購入。その後当時は取り締まりの対象だった個人売買の市場に卸して収入を得ていたという。北朝鮮における市場での売買は2000年代に合法化され、脱北者への調査の報告書では、「市場がなければ生活できない」と答えた人は90%を超えるとしている。イさんによると、イさんが脱北する4年前には人々の売買は住宅の取り引きや市場で物を売る権利まで拡大していたという。イさんを始め市場経済の中で生きてきた世代は考え方に変化がみられ、報告書では「個人のことが党・国家のために犠牲を払うよりも重要」と答えた人は48%で、思わないとした人を上回った。そして個人主義的な傾向は金正恩政権時代に入って大きく増加したという。