去年9月の記録的な大雨で広い地域が浸水する被害を受けた千葉県茂原市できのう市長選挙が行われ元県議会議員の新人が16年にわたって市長を務めてきた現職を破って初当選した。今回の保守分裂の一騎打ちとなった選挙戦で大きな争点の1つとなったのが水害への対策だった。市内で飲食店を経営する中村正利は去年の大雨で店が1メートルの高さまで浸水する被害に遭った。店の近くを流れる一宮川は過去にもたびたび氾濫してきた。中村は水害を繰り返さないため堤防のかさ上げを早急に進めるべきだと考えている。今回の選挙で中村は現職の田中豊彦氏を支援。堤防のかさ上げの必要性を強く訴える姿勢に共感したためだ。16年にわたって市長を務め水害を経験してきた田中氏は堤防のかさ上げに力を入れてきた。ただ、川を管理するのは県で、市単独では対策を取ることができないため再選することで県に対して工事の拡大を強く要望できると訴えた。こうした田中氏の主張に対抗したのが新人の市原淳氏。水害対策の中で現職の在任中に見過ごされてきた問題があると指摘。それが降った雨が流れずにたまる内水氾濫。市内に住む橋口よし子は大雨で自宅が床上浸水した。当時、自宅前の道路は1メートル以上も冠水。近くに大きな川はないことから内水氾濫が浸水の原因だと考えている。市原が内水氾濫の対策の中心に掲げたのが田んぼダムの拡大。大雨の際に田んぼを遊水池として活用することで地域の水はけを改善する。ただ現在、市内の田んぼで活用できるのは全体の僅か3%にとどまっている。稲作への影響もあるため農家の協力が欠かせない。市原氏は農家への支援制度を拡充するなどして働きかけを強めていくと訴えた。結果は市原氏が当選し、田んぼダムだけでなく堤防のかさ上げについても検証を行うとしている。今回の市長選挙、投票率は46.92%で前回を10ポイント近く上回り関心の高さがうかがえた。水害対策が大きな争点となったが敗れた現職の田中氏は高齢多選という批判を受けていたため、若い力を市民が望んだのではないかと振り返っていた。