現在の最低賃金の全国平均は、時給1004円。最低賃金をどこまで引き上げるかを議論する、厚生労働省の審議会が開かれた。最低賃金に近い給与で働く人の割合を、年代別に示したグラフを紹介。10代、20代とともに多くなっているのが、60代、70歳以上の高齢の世代。高齢者の生活にも影響を及ぼす最低賃金はどうなるのか。全国平均より低い最低賃金900円の山形県。最低賃金で働く男性を取材。定年退職後、介護関連の施設でパートとして週6日働いているが、限られた時間のため、月の手取りは5万円ほど。年金も受給しているが、食費や光熱費などを支払うと手元にはほとんど残らない。男性は「年金だけではきつい。生きることはできるが、生きているだけ」と語った。いま家計を圧迫しているのが物価の上昇。なるべく値引きされた品を選んで、食事は自炊。趣味の映画鑑賞も控えて、節約している。今後も年金の支給額は増えないと見込まれる中、持病があり、これ以上長い時間働くことも難しいのが現状。男性は「全国の格差をなくす、そこまで頑張ってほしい」と語った。最低賃金に近い給与で働く高齢者は少なくない。総務省の労働力調査によると、65歳以上の働く高齢者は増え続けていて、去年は過去最多の914万人となった。最低賃金に近い人の割合を年代別に示したグラフによると20代前半までの若年層が特に高く、それ以降は減っているが、60代を境に再び高くなっている。厚生労働省の調査では、おととしの高齢者世帯の平均所得は年金や賃金を含めて304万9000円で、そのほかの世帯の半分以下にとどまっている。高齢者世帯で生活が苦しいと回答した世帯は前年より10.7ポイント高い59.0%に上り、統計を取り始めた1986年以降で最も高くなった。こうした厳しい実情は、最低賃金が全国で最も高い1113円の東京でも聞かれた。中小企業の中には、大幅な引き上げに慎重な見方もある。300人余が働く埼玉県の総菜メーカー。原材料や資材の高騰が重くのしかかっている。会社では毎年、時給を引き上げているほか、この春には人材確保のため、正社員の賃上げも実施。人件費の負担が増えている。作業の効率化のほか、商品の値上げなど、価格転嫁も進めてきたが、これ以上の転嫁は難しいという。総菜メーカー・栗田美和子社長は「人件費・光熱費が上がった。値上げさせてください”とは言いづらい。でも上げないとみんなの生活が困ってしまう」と語った。今年度の最低賃金について議論する厚生労働省の審議会が行われた。労働者側は物価高が続き「労働者の生活が厳しさを増している」などとして、全国の半分程度の都道府県で時給1000円を超えるために、現在1000円以下の道と県を中心に67円の大幅な引き上げを求めた。これに対して、企業側は「コスト増加分を価格転嫁できない企業が相当数あり、従業員30人未満の企業の賃上げ率が2.3%と、十分な賃上げができていない」として、大幅な引き上げには慎重な姿勢を示した。具体的な引き上げ額は示さなかった。注目される最低賃金の引き上げ。専門家は、企業への影響を検証する必要があるとしたうえで、働く高齢者の視点も重要だと指摘。リクルートワークス研究所・坂本貴志研究員は「労働市場を整えていくことで、年金が少し下がったとしても、高齢期にも安心して暮らせるような環境を整えていくことができると思う。最低賃金もそういった観点で今後、引き上げを考えていく必要があるのでは」と述べた。最低賃金の議論は、来週まで行われ、全国の目安が決まる見通し。春闘の流れを受けて、最低賃金も、過去最大となった去年を上回る引き上げとなるかが焦点。