埼玉県の山あいの町、越生町はハイキングが盛んな所として知られ、今の時期、たくさんの観光客が訪れている。その町でボランティアとして観光案内を続けている車いすの男性。3年前から町の観光協会公認の案内人を務めている川崎政春は越生町に生まれ育ち、晴れた日はほぼ毎日、町を案内。迷っていそうな人を見つけるとみずから声をかけている。ハイカーの道案内をしようと登山口まで向かうこともあるという。町内の花店で働いていた川崎は日頃から登山や山道を走るトレールランニングなど山のスポーツに打ち込んでいた。しかし5年前、自宅の屋根を掃除中に転落。脊髄を損傷し両足を動かせなくなった。もう二度と山には登れないと生きがいだった山のことは忘れようと思った。そんな川崎を前向きにしてくれたのが観光客との会話だった。気持ちを紛らわそうと車いすで町を散策しているとハイカーなどに道を尋ねられるようになった。越生の山のことなら何でも知っている川崎の案内は評判を呼んで、3年前、正式に依頼を受けて案内人として活動することになった。川崎が観光案内人になってから町の観光協会にはたくさんの感謝の声が届いている。そんな川崎にもう一度越生の山に登ってもらいたいと今月、町の人たちが川越を町の山々を見渡せる場所に連れていくというイベントが行われた。かつて何度も登った越生の山を町の人が交代で運んでくれた。一度は諦めた山に案内人として関わり方を見つけた川崎。ふるさと越生町のためにきょうも車いすで町を回っている。川崎は60代にして車いす陸上の練習という新たな挑戦も始めている。