農林水産省によると、全国の農業従事者の平均年齢は69.2歳。高齢化を理由に、コメ農家も廃業が相次いでいる。こうした中、全国有数の米どころ・山形県には、若者の力で事業を拡大している農業法人がある。従業員は5人、平均年齢は29.4歳。代表の土井信治さんは、高齢化などでコメ作りをやめた農家から田んぼを借り受け、毎年、作付面積を拡大している。去年はおよそ40ヘクタールに作付けして、200トンを超えるコメを収穫した。土井さんが大事にしていることは、若くても仕事に裁量を与えること。これが就職活動をする若い世代に響いている。従業員の木賀佳南さんは、祖父母のコメ作りを見ながら育ち、自分も現場に出てコメ作りがしたいと4年前に入社した。従業員には、ひとりひとりに田んぼが割り当てられ、田植えから収穫までを任されている。慣れない農業用機械の使い方は、土井さんや先輩が指導してくれる。さらに、若い世代ならではの感性を生かしてほしいと、オンライン販売も任されている。木賀さんは、販売ページの管理を担当。地元の名峰・鳥海山を背景にしたこだわりの写真や地域の話題を盛り込んだ文章でPRする。SNSではおしゃれな作業着など生産者の何気ない日常を発信して、農業の新たな形を目指している。農業法人の売り上げは、この10年でおよそ6倍に増えるなど急成長した。土井さんは去年、従業員の初任給を5%上げた。「にぎやかな農業にしたい。まったく斬新な考え方をもっているし発想も違うので、それに頼って地域だとか農業をよくしていただきたい」と述べた。ただ、課題もある。コメ作りは自然が相手、田植えや稲刈りといった繁忙期は休みが取りにくいのが実情。「もっと働きやすい環境にするために何ができるか考え続けている」と土井さんは話していた。