現代の名工に選ばれた東京・麻布十番「更科堀井」9代目・堀井良教さんを取材。創業1789年、江戸から235年続く行列の絶えない大人気のおそば屋。堀井さんは「自分の人生に対するご褒美みたいでわりとうれしい」と語った。卓越した技能を持つ職人などに与えられる現代の名工。これまで料理人では道場六三郎さんや陳建一さんなどが選ばれている。江戸時代から伝わる技術を追求し、磨き上げてきた堀井さんは、そば文化をより広げるため海外への発信にも力を入れていた。白さの秘密はそばの実。問題「そばの白さを出すために何をしている？」、正解「そばの実の中心部だけを使う」。江戸から伝わる技術を見せてもらった。そばつゆはカツオ節としょうゆを煮詰めじっくり寝かせたかえしを合わせる。
江戸時代からの技をつなぐ更科堀井。1941年、出資していた銀行が倒産。資金繰りが悪化し廃業に。7代目の曽祖父の時だった。堀井さんは「父としては昔ながらのおいしいおそば家業としてやりたいなという思いが強かったらしく、大学を卒業する年にお前がやるんだったらもう1回、堀井の家業として復興しようよみたいなことで」と語った。当初、継ぐ気はなかったが、父・良造さんの強い思いに応えそばの道へ。慶應大学を卒業後9代目として厨房に入るが思ったように売り上げが上がらない日々が続く。そこで試行錯誤を繰り返す。9代目の堀井さんは、元々堀井家からのれん分けをして名店（大森海岸／布恒更科、築地さらしなの里）となっていた店に教えを求めた。機械化されていた工程をそば打ちからつゆ作りまで昔ながらの方法に。堀井さんは「あっという間に倍くらいの売り上げになって。1つの転機だった」と語った。麻布十番に更科堀井の名で復活を遂げ、現代の名工に選ばれた。堀井さんは「日本の食全体を上げていきたい」と語った。美味しい年越しそばを伝授。