先週、EU(ヨーロッパ連合)で包括的にAIを規制する法律が成立した。「AIには人権侵害や差別につながるリスクがある」という考え方から、リスクの大きさに応じて利用禁止、監視などリスク管理、AI使用の明示などに規制を設け、違反した場合は高額な罰則を科すというもので、2026年に本格的に適用される。EU域内で活動する企業はすべて対象になるため、日本企業も対応に乗り出している。富士通は2021年にEUのAI法案発表を受けて専門の対策チームを設置し、去年にはヨーロッパや米国など地域ごとにAI責任者を配置するなど対応を強化した。NECも人権やプライバシーの観点からAIビジネスの戦略立案する専門組織を設立しており、EUのAI法成立を受けてリスク管理の強化を進める方針。日本と米国は企業の自主規制を基本としているが、米国で法規制の動きがあり日本でも検討を始めることになった。野村総合研究所・小林慎太郎グループマネージャーは「サプライチェーン全体で対処しないとAIのリスクには十分対処できない。AIシステムへ対処するため横断的な組織を立ち上げて、リスク管理の体制を構築していくことが日本企業には求められる」と指摘している。