千葉県野田市にある鈴木貫太郎記念館は、鈴木ゆかりの品々や日記などを所蔵している施設だが、6年前から休館が続いている。きっかけは台風による大規模な雨漏りだった。築60年の建物では収蔵品の保管が難しくなり、所蔵資料は別の鈴木貫太郎記念館の収蔵室に移動した。鈴木貫太郎は1945年4月に総理大臣に就任。軍部が徹底抗戦を訴える中、海軍出身でありながら水面下で和平工作を進めたとされる。7月にポツダム宣言が発せられると、受諾に向けた検討を始めた。昭和天皇が出席した御前会議で「聖断」を仰ぎ、8月15日に“終戦”へ導いた。在任期間は133日と短かったが大きな役割を果たした。終戦の3年後に亡くなるまで平和を願い続けた。鈴木が大切にした言葉は「正直に腹を立てずに撓まず励め」。学芸員の笹川さんは「正直であって怒らず真面目に過ごす人柄だったこそ、終戦の内閣総理大臣に選ばれたのではないか。貫太郎の思いを受け継いで感じていただける記念館が必要になるのではないか」などと語った。運営する野田市は2030年の再開を目指して建て替える構想を打ち出したが、建設費の高騰で先行きが不透明となっている。そんな状況で笹川さんが進めているのが出張展示。先月下旬からは鈴木が子ども時代を過ごした前橋市で開催。笹川さんが講演も行い、記念館再開に向けた募金活動も行っている。