直島はアートの島として知られている。2006年に須田さんは家や庭も含め作品にした碁会所を制作した。左の部屋には木彫りの椿の花が23個飾られている。右の部屋には何もないように見えるが手前の竹の結界は須田さんが竹に似せて作った精巧な木彫り作品。その存在に全く気づかずに帰っていくお客も多い。時間をかけ技巧を尽くして本物を偽物に作り変えるのは何故なのか?須田さんと長年交流のある杉本博司さんはフェイクのほうが現実にはリアリティがある。フェイクに満ちた世の中にフェイクに最高傑作を提示することによって偽物の偽物は本物になるという大転換が起こるという。杉本さんにもシロクマという作品が。氷上でアザラシを仕留めたばかりのシロクマの写真は、博物館に展示された剥製を撮影したもので、偽物だけで作られた本物以上のリアリティ。須田さんの作品も全て本物と見紛うものばかりの精巧さ。それを思いがけない場所に置くことで全体が本物以上のリアリティを発揮する。野に咲く雑草よりもフェイクの雑草が置かれた光景に出会う時より強い生命力に感じることも。
住所: 東京都渋谷区松濤2-10-7