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今回は雑草彫刻を特集。
オープニング映像。
渋谷区の渋谷区立松濤美術館へ山本美月がやってきた。須田悦弘の作品がロビーに設置されている。どうみても本物の木の枝は木彫の作品。さらに窓の外にある樹木と雑草をよく目を凝らすと本物の植物に混じって雑草の作品が。素通りしてしまうような場所にさり気なくおかれた作品たち。そんな展示の面白さにハマってしまう人が続出。さらに作品がある場所へ。壁にかかるバラは木彫りの作品。植物を守る鋭利なトゲと雄しべと雌しべと薄い花びらには花脈も。宙に浮くように逆さまに吊るされたバラからは花びらが散る様子が。次に雑草という作品はまさに壁と床の隙間から生えたような作品。ポップアップ型のコンセントからも本物と見分けのつかない雑草が生えている。
山本が2階の展示室に向かうとそこには小さな雑草に手を伸ばす男性のシルエットが。美術家の須田悦弘さんは多くの気にもとめない雑草をなぜ作品にしようといしたのか?
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- 渋谷区立松濤美術館
須田悦弘さんは1969年に山梨県。一宮町の農家兼観光農園に生まれた。幼い頃から絵を描くのが好きで多摩美術大学に進学。授業で木彫りに出会った。初めて作ったのはスルメ。その後独学で技術を磨きながら卒業後はデザイン会社に就職。アサヒ飲料のアサヒ 十六茶のパケージイラストなどを手掛けた。働きながらも木彫りの道に進みたいと銀座で個展を考えるが、当時人気のギャラリーは金額的に手がでなかった。その時銀座の通りで目にしたのが1時間300円のパーキングメーター。須田さんは移動式の展示室を自作し、パーキングに駐車した。リヤカーのようにひいて1時間毎に移動しながら個展を行った。その移動式展示室は床から天井まで純金箔が貼られ、奥にはたった一つチチコグサモドキという雑草の木彫作品を飾った。この作品の意図に須田さんは銀座の植物でマイナーな植物にしたいと雑草に注目。自身で自生しているという点で道端でやるにはふさわしく、雑草という普段誰も見向きもしないようなものを時間をかけて手で作るのはバカバカしく面白いと感じたという。その個展のタイトルは銀座雑草論。この画期的な展示は、美術界でちょっとした話題に。こうして雑草彫刻がライフワークになった須田さんは、その作品は各地でみることができる。瀬戸内海に浮かぶ香川県直島町の美術館のベネッセハウスミュージアムにはここに展示された須田さんの作品は壁のコンクリートの隙間から生えている。何の説明もなく、気付いた人だけが楽しめる作品。そんな超絶技巧の雑草アートを今回は1から制作してもらう。
今回の展示場所の渋谷区立松濤美術館は哲学の建築家と称された白井晟一が手掛けたユニークな形の美術館。須田さんは個展にあたり、まず何度も展示室の下見を繰り返し設置場所を決める。壁の隙間からしなやかにツルを伸ばすスズメウリ、スタンド照明の後ろから覗いているのはドクダミ。設置場所に合わせ作品をイメージしてから制作する。今日の作品も展示室の意外な場所に設置するという。次はモデルとなる雑草を探す。鍋島松濤公園にやってきたがその中の雑草を木彫りにするためにはまずその被写体の写真を用意。素材はおもに朴の木を使用。11本の彫刻刀と2本のノミを使う。まず茎や葉をパーツごとに掘っていく。上の葉から順につくっていき、大まかに形を削っていく荒削りをしていく。ここから彫刻刀をかえて更に薄くしていく。次に葉脈を彫り、葉先を整え軸から外していく。先ほど作った茎に葉を装着。この一枚に1時間かけて掘っている。このあと残りの葉を順番に作り彩色を施す。それが展示される空間ごと作品に変えてしまう須田さんの木彫りアート。2つの部屋が並ぶ作品では左には木彫りででいた椿の花が。右の部屋には何もないようだがそこには須田さんのマジックが。
直島はアートの島として知られている。2006年に須田さんは家や庭も含め作品にした碁会所を制作した。左の部屋には木彫りの椿の花が23個飾られている。右の部屋には何もないように見えるが手前の竹の結界は須田さんが竹に似せて作った精巧な木彫り作品。その存在に全く気づかずに帰っていくお客も多い。時間をかけ技巧を尽くして本物を偽物に作り変えるのは何故なのか?須田さんと長年交流のある杉本博司さんはフェイクのほうが現実にはリアリティがある。フェイクに満ちた世の中にフェイクに最高傑作を提示することによって偽物の偽物は本物になるという大転換が起こるという。杉本さんにもシロクマという作品が。氷上でアザラシを仕留めたばかりのシロクマの写真は、博物館に展示された剥製を撮影したもので、偽物だけで作られた本物以上のリアリティ。須田さんの作品も全て本物と見紛うものばかりの精巧さ。それを思いがけない場所に置くことで全体が本物以上のリアリティを発揮する。野に咲く雑草よりもフェイクの雑草が置かれた光景に出会う時より強い生命力に感じることも。
須田さんが作っていた作品は盛り上がった葉に日本画の画材である岩絵具などをニカワでといて塗っていく。葉の表は裏よりも少し濃い色で塗る。葉脈が浮かび上がり完成。これを美術館の展示ケースの奥に変わった角度で張り出している柱の下においた。
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