上海市内を走る1台の白いバンは、EV向けにあるサービスを提供している。到着した先はオフィスビルの駐車場。白いEVの前に止めると、荷台から大きな青い箱が出てきた。その箱をEVの前に運ぶとケーブルを充電口に繋いだ。これはEV向けの移動式充電サービス。注文したのは目の前のオフィスで働くサラリーマン。充電サービスを提供するのは2017年創業の「送来電」。現在、上海・アモイなど4都市で事業を展開している。客はスマートフォンから車種・ナンバー・充電したい時間・場所を入力して注文する仕組み。約600円の配送料がかかるものの、充電費用は1kWhあたり30円前後と周辺の充電ステーションとほぼ同じ。いかに低コストを実現しているのか、配達を終えた配送車を追ってみると、ついた先は月極駐車場。そして心臓部と成るのがコンテナ。中に入ると電池が整然と並んでいる。同時に最大8個の充電ができ、残量0から約2時間でフル充電が可能。新たに建物を建てず駐車場にコンテナを置くだけのため、わずか5時間で完成するという。さらに充電設備にも大きな秘密がある。既存のEV充電スタンドから電気を引くことで高い費用がかかる電気工事も省略。さらにコンテナは中古のものを活用することで基地局1か所を作るコストは2,400万円ほどに抑えた。EVなどの新エネルギー車が月100万台以上売れ、新車販売全体の3割以上を占めるほどになった中国。充電問題を解決する技術が次々登場している。新興EVブランドの「NIO」はわずか3分でバッテリーをまるごと交換できるシステムを開発。交換ステーションは5年半で2,200か所にまで増えた。さらに上海市内の駐車場に登場したのは、充電器のない場所でもEVに充電できるロボット。注文を受けると自動運転で車まで駆けつけ、完全無人で充電を行う。こうした技術に比べると「送来電」の方法は一見地味にも見えるが、「ロボットや移動式設備は私たちも試した。技術的には成熟していてもビジネス的には普及が難しいと思う。私たちは既存の施設を利用して展開している。ビジネスモデルを全国に広めるにはコストが最も安い」と話す。