オーストラリア政府は17日、新たな防衛戦力を発表した。太平洋地域で存在感を増す中国に対し警鐘を鳴らす狙いがあるとみられる。80ページにわたる防衛戦略では軍事力の増強など大規模な国防計画が盛り込まれている。オーストラリア政府は国防費を500億オーストラリアドル(約5兆円)段階的に増額すると発表した。10年間で国内総生産に対する国防費の割合は2.4%となり、宇宙やサイバー空間への大規模な投資やアメリカ・イギリスとの安全保障の枠組み「AUKUS」を通じた原子力潜水艦計画を含め、総額は3,300億オーストラリアドルとなる。オーストラリア政府は「新たな防衛戦略策定の目的は、地域における平和と反映・安全の推進であり、国境の防衛にとどまらず防衛力をアジア地域に発展させることが重要」としている。オーストラリアのマールズ国防相は会見で政府の方針について「冷戦後の戦略の楽観的な前提は遠い過去のものとなった。今の環境はアメリカ・中国両国の戦略的競争に伴う不確実性と緊張に左右されている」「これまでオーストラリアの安全保障は地理的には沿岸ではなく内陸に重点を置いてきたが、現在の環境下では敵がオーストラリアの土を踏むこと亡くして我々に大きなダメージを与える可能性がある」などと指摘した。また、燃料の85%を韓国・マレーシア・シンガポールからの輸入に頼っているため、「貿易ルートを守ることも重要」とし、「海上交通路に頼るオーストラリアにとっては海の交通規則が全てである」と語った。今回の新たな防衛戦略によりオーストラリアは軍事力を拡大させる意思を示しているが、不安定感を増す世界状況の中においてはこれでもまだ十分ではないという指摘もある。