日本の野球を普及していこうとする背景には別の目的もある。フィリピンにはかつてスモーキーマウンテンと呼ばれたゴミの投棄場所があり、スラム街の子どもたちがリサイクルできるものを拾い集めて生計を立てていた。スモーキーマウンテンは政府によって閉鎖されたが、現在も大規模なスラム街があり、元プロ野球選手・柴田章吾たちはそうした地域の子どもたちに野球を教えている。フィリピンでは野球はマイナースポーツだが、大学に野球リーグがある。各大学には野球に秀でた学生に奨学金を支給する制度があり、その対象に選ばれるよう柴田さんたちは子どもたちに野球を教えている。これまでに105人のスラム街の子どもが奨学金をもらって大学に進学することができた。こだわっていることは日本流の野球を教えること。礼儀や礼節を教えることで、奨学金の選抜や将来の就職も見据えているという。ただし日々の生活が難しいスラム街の子どもたちに野球を教える難しさもあるという。能條は「フィリピンのスラム街に行ったことがあるが、フィリピンは格差社会で、小学校でさえ英語ができないと、などといった様々な面で格差がある」などと話した。柳沢は「アジアで野球が普及しているのは経済的に裕福な韓国や台湾など。野球を普及させるために生活水準を底上げしないとなかなか難しいものもある」などと話した。