阪神淡路大震災から30年。過去の災害の教訓を首都直下地震などの対策に生かす新たな取り組みを取材。今、災害用井戸に注目が集まっている。井戸掘屋・深沢勉社長は、電話が鳴る件数は去年1月1日に地震があってから多いと話す。きっかけは能登半島地震の影響で起きた断水。当時、石川県を中心に最大およそ13万戸が断水し衛生環境の維持などに深刻な影響を及ぼした。ほとんどの病院が影響を受ける中、2か月間断水したものの井戸の活用により通常と変わらない医療を継続できた石川県七尾市の恵寿総合病院。井戸水は建物内に行き渡っていてトイレやシャワーなど普段と変わらないように蛇口をひねれば水が使えた。恵寿総合病院・神野正博理事長は、井戸を確保できたというのは私たちの病院の強靭化にとっては必須だったなどと語っていた。こうした教訓を受けて井戸を活用する取り組みは首都直下地震が懸念される東京都でも進められている。品川区では断水時も井戸水で流せるトイレを導入している。一方、民間でも災害時に一般家庭の井戸水を近隣住民に生活用水として提供する取り組みも。井戸水は飲めるものと飲めないものがあり東京都には、断水時にトイレなどの生活用水として使える災害用井戸が5900か所登録されている。こうした自治体と住民が連携して井戸水を活用する取り組みを推進するため去年8月には国の検討会が発足した。座長を務める専門家は今ある井戸を最大限活用できれば首都直下地震などの大規模災害でも被害を減らせると指摘する。大阪公立大学・遠藤崇浩教授は、新しい減災の可能性、政策の選択肢をこれから考えていく必要がある、と述べた。