滋賀県・高島市で生まれ育った中村正博さん。昔から琵琶湖がプール代わりだったという。琵琶湖にはヨシが群生しており多様な生物の棲家にもなっている。冬になるとヨシの茶色くなった部分を刈り取りよしずなどに利用されてきた。しかし需要が減った近年は放置されるヨシが増えており、水質悪化を招いて生態系への悪影響も懸念されている。中村正博さんは織物メーカーの社長でもありヨシから布は作れないかと模索が始まった。ヨシの繊維を混ぜて和紙を作り糸に加工していくが、細い糸だと強度が出ないなどの問題はあったが3年かけて完成させた。糸が細いと様々な種類の生地に組み合わせやすくなるという。5年間で50種類以上の生地を織り、出来上がった葦布は吸湿性が良く麻に似たサラッとした質感が特徴。環境保全につながることも評価されて、シャツや靴、バッグなど利用が広がり、ヨシからできた葦布は大阪関西万博のスタッフ帽子にも採用された。