今回の主人公・桑村雅治さんは60歳。今年勤めていた家電メーカーを定年退職し、現在は週に2～3回のペースで登山のためのトレーニングをジムで行う。ただ筋力はつけなくては重くなりすぎてもいけないのだという。7月、桑村さんは仲間たちと富士山の登頂を目指す。桑村さんの登山は腕立てと片足スクワットを繰り返すようなものだという。8歳の時、桑村さんは骨肉腫で足を切断した。しかしお母さんの「足を切断しても助かる可能性は10％だった」という言葉を聞き「片足になっても何かをしなさいと神様が言っている」と感じたという。初の登山は44歳の時、達成感が非常に大きかったという。この日桑村さんと一緒に登ったのは聴覚や足に障害のある仲間、挑戦することの大切さを伝えたかったのだという。妻の伊佐子さんは桑村さんの挑戦を近くで見守る。2人の間には「無事に帰ってこい」という約束があるのだという。そして桑村さん自身も応援してくれる伊佐子さんがいるからこそ死ねないと考え、そのうえで百名山に挑戦したいのだという。11年前に百名山に挑戦し始めた桑村さん、これまでに63箇所の山に登ったという。今回桑村さんが挑むのは鹿島槍ヶ岳と五竜岳、4日間かけて登る予定だという。昨年と一昨年には撤退してしまったという桑村さん、今年は強い思いで臨んでいる。桑村さんは自分と同じように片足で山に登り続けたという横田貞雄さんの存在に感銘を受けたという。また横田さんが語るように、ハンディがあるからこそ、遭難したり事故に合うことは後進の道を閉ざすことになると考えているという。
これまでSNSで横田さんの情報を探していたという桑村さん。今回横田さんの親族の方が見つかり、長野県に向かった。甥御さんだという男性と話し、横田さんが「未知の山」と表現していた鹿島槍ヶ岳、桑村さんは挑戦への決意を新たにした。8月28日、桑村さんの鹿島槍ヶ岳への3度目の挑戦が始まった。今回は対策として極力荷物を軽量化して登山に臨んだ。しかしそれでも負担はあるという。途中膝を痛めたという登山者と会うと、桑村さんは無理をしないことの大切さを伝えた。足を進めても、鹿島槍ヶ岳は雲に覆われ見えない。初日、桑村さんは予定どおりの山小屋に到着した。2日目、鹿島槍ヶ岳を目指し桑村さんは出発した。前回はこの辺りでリタイアしたという桑村さん、今回は1つ目の目標である鹿島槍ヶ岳の山頂にたどり着いた。2日目の山小屋に到着後、桑村さんは伊佐子さんに報告した。3日目、いよいよ五竜岳を目指していく。五竜岳は狭い道と険しい岩場が登山者の道を阻む。険しい道程を経て、桑村さんは3度目の挑戦で五竜岳の山頂にたどり着いた。道中のキツさを口にしながらも「景色は最高ですね」と話し、伊佐子さんとの約束通り無事に帰宅した。これで登頂した百名山は65に。桑村さんは4年後に百名山登頂を予定しているという。