東日本大震災の発生から13年。これまで見落とされがちだったのが、震災の後に生まれた子どもとその親の心のケア。震災時、長男を妊娠中だった女性。震災からおよそ5ヶ月後に、実家のあった大船渡市に帰って出産した。実家の1階部分は大きな被害を受けていたため、2階で1か月ほど過ごしたという。女性は、震災後の混乱が続く中で子どもの心の成長にも少なからず影響が出るのではと感じたという。そこに注目したのが、岩手医科大学の八木淳子教授。震災発生から5年後にスタートして以降毎年、被災3県で合わせて200組以上の親子を継続的に調べている。調査の中で震災当時の心の状態などについて振り返ってもらったところ、岩手県では40%以上の親が躁鬱や自殺を考えるなど、何らかの精神不調を抱えている状態だったことが分かった。宮城、福島の2県よりもその割合が高くなる結果となった。八木教授はもともと医療資源が豊富ではない岩手で、震災前に妊婦や親を支えていた地域コミュニティが震災で分断されたためではないかと指摘し、震災から10年が経過した段階でも、心理的トラウマを抱えている状態の親が全体の10%ほどに上ることも最新の調査で明らかになった。心の不調を抱えている親のもとでは、子どもの心の発達や行動にまで問題が生じやすくなるという調査結果もまとまり、教授は希望する親や子どもに対して個別の相談や保育所との情報共有などといったフォローをしたところ、子どもも親も心の状態や発達状況が適切に回復していった。