台湾とフィリピンの間にある海の要衝“バシー海峡”は南北およそ100km。海洋進出を強める中国にとっては南シナ海から太平洋へ抜ける入口。中国軍は先月初めて、バシー海峡を通過した空母「山東」「遼寧」が2隻同時に太平洋に進出して訓練を実施。また、バシー海峡周辺で大規模な軍事演習を繰り返すなど活動を活発化。一方、アメリカ軍が活動を活発化させているのがバシー海峡に接するフィリピンの島々“バタネス諸島”。5月、バタン島に台湾本島までのバシー海峡一帯を射程圏内におさめる対艦ミサイルの発射システムを始めて展開して、中国を牽制する姿勢を示した。台湾を巡る米中対立の最前線にあるのがバシー海峡。バタネス諸島の島々にNHKの取材陣が入った。アメリカと相互防衛条約を結ぶフィリピンは有事の際、矢面に立される可能性もあり、島民たちの間では不安も広がっている。
11あるバタネス諸島の島のうち、人々が暮らすのは3島のみ。人口は合わせて1万9000人足らずで、独自の文化を残す先住民族「イバタン族」が暮らす素朴な島々。先月、島内に常駐するフィリピン海兵隊が軍事訓練を実施。上陸した敵の拠点を制圧する想定で襲撃の手順を確認。参加者はいずれも軍の予備役を務める島民たち。常駐するフィリピン軍は規模が小さく正規の兵士だけでは人員が足りないため、有事の際には民間人の予備役が招集。20歳の女性であるガバルドンは「予備役になりたくて入った」、3人の子どもを持つゲチャは「自国を守りたい」などと話した。有事の際、台湾に近いバタネス諸島も攻撃される可能性があるとして、フィリピン軍はおととしから予備役の募集を強化。これまでにおよそ600人を確保。アメリカ海兵隊とも今年初めて合同訓練を行うなど、軍は予備役の訓練をさらに拡大していく方針。フィリピン海兵隊のプエブラス報道官は「訓練を最大限に増やす必要がある」などと述べた。アメリカ軍も島内での活動をさらに活発化させている。今年4月には台湾に最も近い空港を使って合同軍事演習を実施し、複数の航空戦力を投入。輸送機「オスプレイ」を使った訓練や大型輸送ヘリコプター「チヌーク」を使って軍用車両を島に運び込むなど敵の上陸を阻止する訓練が行われた。
有事さながらの状況に島民たちは不安を募らせている。バシー海峡で漁業を営む漁師のグティエレスは、漁業や観光業が主な収入源となっている島では“このまま緊張が続けば島民の生活は立ち行かなくなる”と心配している。訓練を受け入れたイトバヤット島のサゴン前町長も今後の先行きに不安を抱えている。台湾には出稼ぎ労働者を中心におよそ18万人のフィリピン人が暮らしていて、バタネス諸島は有事の際の退避ルートの1つに想定されている。しかし、避難民に対する島の受け入れ態勢は整っていない。島の港は小さく、大きな船は接岸できないため、アメリカや中央政府に港を拡張するための支援を求めているが、取り組みは進んでいないという。有事に備えて緊急用の食料備蓄倉庫も去年、アメリカの支援を受けてつくられたが、予算が限られているため簡素につくられた倉庫は台風の影響で一部が壊れ、修理のめども立っていない。バシー海峡を巡る緊張は今も高まり続けている。
11あるバタネス諸島の島のうち、人々が暮らすのは3島のみ。人口は合わせて1万9000人足らずで、独自の文化を残す先住民族「イバタン族」が暮らす素朴な島々。先月、島内に常駐するフィリピン海兵隊が軍事訓練を実施。上陸した敵の拠点を制圧する想定で襲撃の手順を確認。参加者はいずれも軍の予備役を務める島民たち。常駐するフィリピン軍は規模が小さく正規の兵士だけでは人員が足りないため、有事の際には民間人の予備役が招集。20歳の女性であるガバルドンは「予備役になりたくて入った」、3人の子どもを持つゲチャは「自国を守りたい」などと話した。有事の際、台湾に近いバタネス諸島も攻撃される可能性があるとして、フィリピン軍はおととしから予備役の募集を強化。これまでにおよそ600人を確保。アメリカ海兵隊とも今年初めて合同訓練を行うなど、軍は予備役の訓練をさらに拡大していく方針。フィリピン海兵隊のプエブラス報道官は「訓練を最大限に増やす必要がある」などと述べた。アメリカ軍も島内での活動をさらに活発化させている。今年4月には台湾に最も近い空港を使って合同軍事演習を実施し、複数の航空戦力を投入。輸送機「オスプレイ」を使った訓練や大型輸送ヘリコプター「チヌーク」を使って軍用車両を島に運び込むなど敵の上陸を阻止する訓練が行われた。
有事さながらの状況に島民たちは不安を募らせている。バシー海峡で漁業を営む漁師のグティエレスは、漁業や観光業が主な収入源となっている島では“このまま緊張が続けば島民の生活は立ち行かなくなる”と心配している。訓練を受け入れたイトバヤット島のサゴン前町長も今後の先行きに不安を抱えている。台湾には出稼ぎ労働者を中心におよそ18万人のフィリピン人が暮らしていて、バタネス諸島は有事の際の退避ルートの1つに想定されている。しかし、避難民に対する島の受け入れ態勢は整っていない。島の港は小さく、大きな船は接岸できないため、アメリカや中央政府に港を拡張するための支援を求めているが、取り組みは進んでいないという。有事に備えて緊急用の食料備蓄倉庫も去年、アメリカの支援を受けてつくられたが、予算が限られているため簡素につくられた倉庫は台風の影響で一部が壊れ、修理のめども立っていない。バシー海峡を巡る緊張は今も高まり続けている。