9月下旬、シンガポールでアジア最大級の海底ケーブルの展示会が開かれた。70の国や地域から通信事業者や政府関係者など1000人以上が集まり熱気に溢れた。国際的なデータ通信の基盤となる海底ケーブルは地球に巻き付くように張り巡らされており、総延長は地球35周以上にあたる150万kmに及んでいる。日本の海底ケーブル運用最大手NTTグループでは、拡大する通信需要を確実に取り込もうとアメリカから太平洋を横断してインドまで結ぶエリアでの敷設を検討していた。一方でアメリカのテック企業も海底ケーブル分野に投資を行い自ら運用に乗り出している。AI需要が高まる中、自社のデータセンターと希望する国や地域に迅速に海底ケーブルを敷設したいとの考えがある。メタは世界5つの大陸をつなぐ総延長5万kmのプロジェクトを発表し積極投資する構え。これに対し最近存在感を高めているのが中国。習近平国家主席が掲げるデジタルシルクロード戦略では5Gや電子商取引、クラウドサービスなどを友好国にパッケージで提供する。中でもインフラとなる海底ケーブルは重点項目に位置づけられ、低価格の敷設を売りに友好国に欧米に依存しない情報網を築くことで中国の影響力を高め世界の通信分野の覇権を握ろうという狙い。NTTはわずか0.3秒の間に2時間の映画1万本がダウンロードできる次世代の通信技術の開発に力を入れている。
