2018年、久保田孝が人事異動でJAXAの部門長に昇進。現場を離れることを余儀なくされた。後任として開発リーダーを任せることにしたのは32歳の若手研究員・平野大地だった。平野は長野県出身。アウトドア好きの両親の影響で星空を眺めるのが好きになった。だが「好きなことを極めなさい」と母は15歳の時に他界。それ以来、好きなことに全力を尽くすのが平野の誓いとなった。月面着陸には世界にまだ例がない「ピンポイント着陸」「小型ロボが着陸したSLIMを撮影し地球に送信」という2つのミッションが課せられていた。小型ロボの搭載条件は直径8cm、重さ300g以内。条件を知った渡辺は眉を曇らせた。8cmでは月面を移動できないことは検証済みだった。渡辺は共に二足歩行ロボットを開発した米田陽亮に助けを求めた。目標は8cmの大きさで月面の移動に必要な30度の斜面をの登ること。何度やっても斜面は登れなかった。平野はロボットを過酷な宇宙環境に耐える強度に仕上げる役割を担っていた。しかしそれは渡辺たちの施策が終わらないと1歩も進まない。ある日、風呂からあがった渡辺の脳裏にウミガメの姿が浮かんだ。ウミガメの赤ちゃんは50度くらいの斜面を登って海に向かう。ウミガメは地面を押さえて登っていく。その押さえるというのを車輪に才能することを思いついた。偏心車輪はモータの軸を車輪の中心からずらす仕組み。どれくらいずらせばいいか、米田は車輪にミリ単位で穴を開け、最適な取り付け位置を探った。試作6号機は33度の斜面をゆっくりと登っていった。こうして小型ロボットの構造が完成した。
