サタデーウオッチ9 (ニュース)
関税の引き上げによって貿易摩擦を引き起こしているアメリカ・トランプ大統領。停戦合意が崩壊の危機にあるガザ情勢。そして、ネット空間にあふれるフェイク情報。この混とんとした時代に私たちはどう向き合っていけばいいのか。今月、日本を訪れた世界的な歴史家への単独インタビューから、そのヒントを探る。9年ぶりに来日したイスラエル出身の歴史家ユヴァル・ノア・ハラリさん。世界で2500万部のベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者。これまでの人類の歴史を振り返り、なぜ私たちが力を持つことになったのかなど独自の視点で切り込み世界を驚かせてきた。互いに信頼できない今の時代に危機感を抱いている。今週、アメリカ・トランプ大統領は日本車を含む輸入される自動車などに来月3日から25%の追加関税を課すと表明した。各国は懸念を示したり報復関税を取る考えを示したりして緊張が高まっている。ユヴァル・ノア・ハラリさんは「問題はより多くの信頼を築く必要がある時に貿易戦争が国家間の信頼を損なっていること。貿易戦争は国家間の関係を悪化させ信頼を損ない、最終的に戦争につながる可能性があることは原則変わらない」と語る。ロシアによるウクライナ侵攻。今、アメリカはロシア、ウクライナと停戦協議を続けている。こうした間にも双方の攻撃は繰り返され信頼関係とは程遠い状況。ハラリさんは「大きな疑問はもし今ロシアと何らかの協定に署名し戦闘が停止した場合、ロシアが2〜3年後に再び侵攻しない保証があるのか。これは将来の仮設のシナリオではない。過去にも起こった」と語る。今月、歴史家・ユヴァルノアハラリさんの新刊「NEXUS 情報の人類史」の日本語版が発売された。テーマに選んだのは情報。あふれる情報によって信頼が崩れることを描いている。日本を滞在中、慶應義塾大学で対談を行い学生からの質問にも答えた。ハラリ氏はSNSなどを運用するIT大手がコンピューター任せにしていることを問題視している。ハラリさんは「情報のダイエットをする必要がある。1日中どんどん情報を取り入れ続けると思いを巡らせ考える時間がなくなる。情報量を制限する必要がある」と語る。混とんとした時代、私たちはどう生き抜くべきなのか。ハラリさんは「人類の長い歴史から学ぶことは信頼を築くという人間の素晴らしい能力。過去の多くの戦争や犯罪など問題があったにもかかわらず人類は互いに信頼することを学んできた。これが何よりも現代に必要なこと。信頼は恐怖や不安よりも重要」と語る。